act.08 ブルーメチルを探せ
シルバーはパンイチで一階まで爆速で降りていった。
「アッハッハッハッハッ」
真っ赤な顔で駆け出していく少年を見て。
「アッハッハッハッハッ」
目に涙を溜めながら呪い殺さんと言わんばかりの目は残念ながら威力はなくて。
「アッハッハッハッハッ!!」
パンイチで駆け出した少年を見てアヤは愉快そうに笑っていた。
そう。この女、少し性格がひん曲がっているのである。
「はっ〜〜〜〜……笑った笑った。秋だねぇ」
トレーナーカードを落とした赤い髪の少年はシルバーというらしい。ものすんごい目付きが悪くてすんごい言葉使い荒くて。シルバー少年はカードを奪い取ると全裸になりつつ逃げるようにマダツボミの塔を去っていった。
ボクもお坊さんに軽く挨拶して塔を出ればあの青い大空がまた顔を覗かせる。
真っ赤な落ち葉が綺麗だ。
さて、次は何処に行こうか?
…何だか一週間の内に家に帰ってしまいそうだ。
「………そうだ。採取したい植物があるんだよね。でもどこにあるのか……ジョウト地方内にあるといいんだけど。図書館行ってみようかなー」
「ブイ」
「そうだね、コガネに行かなきゃ図書館は無いかなぁ」
一応やる事が無いから次の目的地はコガネシティになった。
あまり新鮮味が湧かない、と言うのはつい最近にも(と言っても一ヶ月前くらい)コガネへ足を運んだからだ。
行くのか?と首を傾げるサンダースの頭を撫でてカイリューを出す。サンダースをボールにしまってカイリューにしがみつけば大きく翼を羽ばたいて大空を舞った。
あっという間にコガネに着いて大量にある資料館に出向いたボクは、薬草部類に関する本を片っ端からチョイスした。
ドンっと机に下ろしてパラパラとページを捲る音が静かな部屋に響く。因みにボク一人だ。今時の人は資料館にはあまり寄らないのかな。
本を一冊一冊パラパラと流して行くけど殆どが見たことのある植物ばっかり。うーーん。どのページにあるのか分からない。そもそも名前を知らないのはまずった。
「そういえばこの前来たサプリメントの調合、ちょっと特殊だったんだよね〜…。あんまり使わないタイプの草花が多くて手元になかったんだけど、」
探している植物は少しレアだ。
パラパラパラパラ…とページを捲る音がしばらく続いて、不意に4冊目の植物図鑑を捲って手が止まる。
青い星のような形をした小さな花。
青い星のような形をした小さな花
青い星のような形をした小さな花……。
「あっ」
み、見つけた!
これですこれこれ。
「ブルーメチル草…えー何々?効能は……“人間、ポケモン共同して使える…痛みを和らげる他軽い毒なら解毒できる。煮て使う”……だってさ」
ふーんと横に並ぶ文を読んで一人で何回も頷く。
よし、決めた。次の目的。
ついでにこれを探しに行こう。生息地はどこだろうか。ジョウト内にあればいいのだが。
「えーと、生息地はシロガネ山」
…………シロガネ山?
え?ま?さ、流石にシロガネ山までは行けない。あんな所に行くなんて自殺行為だ。つー、と額から冷たい汗が流れる。
「申し訳ないけど、依頼をキャンセルにして…」
ポケギアをONにして依頼主にメールを開こうと確認した時だった。そういえばお代は既に受け取っている。それに「いつも助かっています」と言う感謝の文字。
アヤは黙った。
………今更できません、ムリです。なんて言うのは、己のプライドが許せなかった。
そして、意外にも考えて結論を出してから行動するのは早いのだ!