act.05 空を飛びながら悩む





とりあえず小旅行だ。今から少しの持ち物を準備する。あっという間に次の日になってしっかりと家の鍵を閉めて靴を履き、肩掛けの白いバッグの中にモンスターボールを5つ。しっかりと中に入れた。残りの1つのボールを手に持ち、「お願い」と一言言えば、赤い光に包まれてボールから翼を強く羽ばたかせたカイリューが飛び出した。

身を屈めたカイリューにツルツルと滑る背中を必死でよじ登りながら跨がった。



「さて…じゃあ、まずはキキョウに行こう!マダツボミの塔!マダツボミまんじゅう買いたくてさ〜揺れる塔も久々に見たいし」

「ルー」

「ッワァァァーー!!ちょっ、いきなり飛ばないでよ!?危ないじゃん馬鹿ァァァ」



バサバサと翼を大きく羽ばたき、いきなり飛び出したカイリューに本気で怖い思いをした。振り落とされないようになんとかしがみついて、ゆっくり青空を飛ぶようになったカイリューを確認してから体制を整える。

ふう、と一息ついて今や小さくなったウバメの森を見下ろした。……泥棒とか入らないよね。大丈夫、かなりの奥地だしまず辿り着ける人は山男みたいな…森男?みたいな奴じゃなければまず辿り着けない。一般人は迷って終わりだろう。


改めてぐるりと周りを見渡せば、群れで飛んで行く野生ポッポの集団に、地上を見ればマダツボミの塔や鈴の塔、焼けた塔、コガネデパート。かなり遠くに見える指一本分のアサギの灯台。ここら辺は空をライドするトレーナーはいないようだ。遠くの方で一般人を運ぶ業者用のピジョットが人間が乗る用の装具をつけて飛んでいるくらいだ。

そしてより一層存在感を示すシロガネ山。

危険区域SSSランクのあの山に伝説の人が長年居る(暮らしてる)とか。有り得ないだろ。いったいどんな神経をしているのだか。でもまあ連絡が途絶えたって。……そういうことだろう。残念だが死亡する確率が高い山に数年間も籠るような自殺行為。死んでもしょうがない。

ワタルさんもまあ凄いよなぁ。シロガネ山に篭ってるの容認するんだもん。あんな爽やかそうな顔して、実は一般人からかけ離れたとんでも脳を持っている人だ。かなりゴリ押しで事件を解決するパワーゴリラタイプだけど。人間に破壊光線を指示する鬼畜ゴリラだけど。



「ジョウトだけでこんなに広いんだよね…隣のカントー地方や近くのホウエン地方も広いけどジョウトもなかなかだよね。歴史があって和風文化が多い地方だし。洋風も勿論いいけど、エンジュシティみたいなガチガチの和もいいよね。舞子さんもいるし、お寺の住職さん達は優しいし。大きい神社もあるし名産物は多いし」


お寺の住職さんは別に関係ないかもしれない。

そんな話をしている内にキキョウシティは直ぐ目の前だ!






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