epilogue-エピローグ-





何だかこちらが慰められた後、既に荷物を纏めた後みたいで洞窟には何も無かった。

洞窟内を共に抜け、山頂にやってくるとレッドはリザードンをボールから放った。



「………ジョウト、か」

「そうだねぇーコガネのラジオ塔とか、マダツボミの塔とか、焼けた塔とかいっぱいあるよ!ジョウトは歴史が古い地方だから楽しいと思う!あとはアルフの遺跡や龍の穴も凄いから一回は見た方がいい!絶対に!」

「…………」

「あぁ、ごめんごめん。あ、八つ橋とかお蕎麦は絶対食べてね!舞子さんも絶対見た方が良い。あと神社で奉納する神楽の舞とか、色々見れるよ。エンジュシティの代表なんだよ!」

「……、……そうか。」

「そう!あ、あとレッド。そのポケモン図鑑、カントーの機能しか無いんでしょ?だったらワカバタウンから最初に行って研究所に行きな。図鑑にジョウトの機能入れて貰うの」

「……そうか。わかった」



楽しそうに喋るボクを見てレッドは微かに目を細め、何かを考えるように無言になった後……笑った。リザードンに跨がるレッドを見て、自分もカイリューをボールから出して飛び乗る。

レッドはジョウト、ボクはシンオウ。お互い違う地方で逆の方向だ。


改めて、空を見上げる。

どこまでも蒼かった。



「アヤ、」

「……うん。じゃあね!」

「…ああ」



短くなった髪を最後に撫でられ、バスっと背中を叩かれた。



「風邪ひくなよ」

「いやそれこっちのセリフ……」

「飯は偏食するな。米も食え」

「いやそれもこっちのセリフ……」

「返事は」

「はぁい」



ふと笑ったレッドの口元。

微かに動いて思わず読み取ったそれは“俺以外に男作ったらそいつを燃やす”という物騒なもので、無心で頭を振った。そりゃ何回も。



「じゃあ、」

「また1年後くらいに」



互いに笑って、レッドは自分の横を、ボクはレッドの横を通り抜け目的の地方へと飛び立った。

本音を言うと一緒について行きたい。でもそれはできないし、振り返れない。未練たらしく思うから。

今の自分には、やるべき事ができたから。


カイリューの背に乗り、心地良い風を受けながら空を見上げる。


次に会う時は一緒にいろんな所に行っていろんなもの見て、同じものを感じて。それでたくさん笑えたら良い。

一緒に星空を見たいなぁ。一緒に行きたいところとかやりたいことが沢山ある。

でもどんなに離れていても人はみんな空の下に居るし、同じ地面に立っているから実質近いようで遠いところに、同じところに居るらしい。誰かが言ってた。


お互いの目標と目的が大きく違うから、次会うのはもしかしたら一年以上も先かもしれないけど。


無事に会えるといい。

だからちょっとだけ、

じゃあねっ て、バイバイするんだ。


次会った時は久し振りっておもいっきり飛びついてやろうと思う。

また今度。

また今度。

またこんど。



もう一度、空を見上げた。











楽譜を書いた。

始まりと終わりを繋げる楽譜。

始まったばかりだから

まだ終わらせたくない。

終わりはいつ来るのはわからないけど

その終わりは無限の可能性を秘めている。


納得いくまで歌えばいい。

納得するまでずっと。ずっと。

失敗したら戻ればいい

楽譜の始まりまで。

もっともっと前まで。


そうしてその先に、綺麗に微笑む望んだあなたにまた逢うのだ。





end



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