act.31 チャンピオン追加






「………で?何で君達がここに居るのか説明して貰えるかい?つか仕事はどうしたんだ仕事は」

「やだなぁワタル!仕事はちゃんと終わらせて来てるよ。それに僕はジョウトに珍しい石を探しに」

「石オタクは黙ってて頂戴。仕事は赤いアフロに任せたのよ!アルフの遺跡に興味があったの。それにジョウト観光がてらに回ってたらおっかない顔したワタル君がカイリュー引き連れて人に破壊光線射とうとしてるし、これは面白い事になるんじゃないかと!」

「僕も同じようなものかなーチャンピオン自ら乗り込んで行くなんて聞いた事無いし」

「…………ようは興味本意で着いて来たのか君達は」



ロケット団本拠地にて。

はぁ、と溜め息を着く俺の前にはニヤニヤ…いやニコニコと笑う見慣れた二人。

ほんの数分前、ロケット団を蹴散らして行く中で大きい爆発音が響いて煙から飛び出したのはガブリアスとメタグロスだった。何故かその二匹には何処かで見たことあるな、と思いつつも威嚇するカイリューに龍の怒りを指示して叩き付けてやろうとした時にその二人が晴れた煙から出て来たのだった。

一人はダイゴ。ホウエン地方のリーグチャンピオンでかなりの石マニアだ。デボンコーポレーションの社長なだけあって金だけは有り余る変な……違った。

見た目はスーツを来たイケテるお兄さんだ。(俺は断じてそう思わない)

二人目はシロナ。こちらもシンオウ地方のリーグチャンピオンであり、歴史を調べる考古学者だ。変な髪飾りみたいなものを付け、黒いコートを着たこの人も黙っていれば美人……なんだけどなぁ。



「ちょっとワタル君。今失礼な事考えて無かった?ダイゴとは一緒にはしないでよね!」

「失礼な!き、きみって人は…!こんなオバサンと一緒になんてして欲しくn」

「うるぁあああああ!!!!!」

「グフォオオオオッッ!!!」



シロナさんの右ストレートが決まった。ドゴオオオ!と音を立てて吹っ飛んだダイゴに同情の眼差しを送り、俺は頭痛を覚えた。何をしに来たんだ、とは言えない。興味本意の彼らはきっと“面白そうだから”と答えるに違いはないのだから。

それにしてもロケット団の人数が予想以上に多い。あれから解散したと思っていたがその残りの奴らが6年かけて少しずつ仲間を増やしていたんだろう。流石ゴキブリ並みの生命力だ。



「ふぅん…ロケット団ねぇ…シンオウにもそれと似たような連中も居たような」

「あ、ホウエンにもそんな奴らが居たよ。ルビーくんとサファイアちゃんの二人がそいつらを潰してくれたし。ボク、ぶっちゃけその場にいたけどマジ空気だったよ。凄いよねぇ今時の子供は」

「そうよねぇ…今時の子供って恐いわぁ…」

「今、キミのとこのロケット団のアジトに来ている子供二人も相当強いんだろ?気を付けなよワタル君。油断してるとあっという間に抜かされちゃうよ!僕も最近その例の二人に負けそうになった後だし」

「え、そうなの?だ、ダサ…ダイゴあなたね、しっかりしなさいよ…」

「君達は何をしに来たんだ本当に」



俺の後ろを二人は着いて歩きながらさながら侵入者とはとても思えない会話と声の大きさでアジトを進んでいく。

したっぱもそれに釣られて寄ってくるけど片っ端から潰した。そんな雑魚を相手にしてから既に30分は経つ。…ゴールド君とコトネちゃんは上手く行ってるかな?ギャラドス捕獲しか見てないけどきっと彼らの腕は見込んだ通りだろう。上手くやっているに違いない。


アヤちゃんは…大丈夫だろうか。

思わず引っ張ってきてしまったが。

あの湖の数のギャラドスをいなすのは俺でもかなり時間がかかる。コイキングの数は数百…いや、ここ数年でもっと増え続けていると思うが、そのコイキングが電波でギャラドスに進化し続けてあっという間に湖の生態系は崩壊した。

他の水ポケモンは恐らくもういない。

進化し、腹を空かせたギャラドスにあらいざい食われ続け
たはずだから。そしてエサが無くなったギャラドス達は今度は共食いを始めているだろう。

あの湖には最早、湖いっぱいにひしめき合った飢餓状態のギャラドスしかいない。

ここのアジトを潰している間に怪電波で操作されたギャラドス達が暴れて、ここら一帯が火の海にされたらひとたまりもないから、それをまとめて抑えられる人材を探していたが……レッド君には断られた。


「俺が抑える必要性が感じられない」


とか。

………まあ。確かに。ちょっとジムリーダーレベルのトレーナー達が数人集まれば何とかできる案件。レッド君は手伝ってはくれないか。

しかしなぁ〜〜〜!今どこのジムも忙しくて手が空かないんだよなぁ〜〜〜。

ということで。

アヤちゃん召喚だ!!

彼女なら場所と条件次第によると思うが、下手したら一瞬で鎮圧できる!………かもしれない。

(後で聞いたら本当に一瞬で鎮圧していたらしい。雷で死なない程度に関電させて、湖ごと凍らせて蓋をしたらしい。名前を金魚鉢とか言ってた。流石だ)

…………それにしても、彼女が心配な訳じゃないが。



「……アヤちゃん大丈夫かな」

「、え」

「アヤちゃん?」

「(あ、口滑った)」



アヤ、の単語を口に出すなり後ろの二人の目の色が変わった気がした。自分の言葉に後々後悔して口を覆ったがもう遅い。

突然肩をガシ!!と捕まれて柄にもなく内心うわっと驚いた。眉を寄せて、汗が頬を伝う。ゆっくり後ろを振り向くと目を異様に……いや、予想通りパチパチバチバチとさせる二人がそこに居た。



「………いるの…?アヤちゃん、いるの?」

「…あ、いや。ここには居ないとは思うんだけど、ね(何しろ怒りの湖に置いてきてしまったし)」

「って事はやっぱりジョウトに居たんだね!?噂を聞き付けて来た甲斐があったよ!」

「やっぱりそれが目的でジョウトに来たのか君は」



どうやら一般市民の噂は本当らしかった。“ホウエン地方のチャンピオン、ツワブキダイゴがジョウトに来ているらしい”という情報。

どうせ珍しい石でも探しに来たんだろうとは思っていたけどどうやらアヤちゃん目当ての方が強いらしい。シロナさんは本当に遺跡を調べに来ていたみたいだったけど今、彼女が。近くにアヤちゃんが居ると知ったならばきっとアヤちゃんに会いに飛んでいくだろう。

俺含め、二人とも彼女を昔から妹のように可愛がっていた。

だから突然失踪した上に行方も生存も知らずのまま6年間は相当心配だったという事は分かる。俺だってやっとの事で所在を掴み、顔を見た時は気の抜ける程安心した。(失踪した理由を聞いたら殺意が湧いたが)

そして何で今まで俺が、アヤちゃんがこの二人に自分の所在地を知らせなかった理由。



「良かったっ…!!ずっと連絡もよこしもしないでアヤちゃんったら!心配したじゃない…これは毎日遊びに行くしか無いわね!ちゃんとご飯食べてるかしらお風呂入ってる?ちゃんと寝てる?聞きたい事が山ほどあるのよね」

「てっきり僕がしつこすぎて逃げたのかと思ったよ…毎日メールしたり毎日電話したり。でもそんな事無かったね」

「おいストーカー」

「だって心配なんだもん」



異常な過保護のせいだ。

………いや、ダイゴはちょっと違うけど。ただのロリコンはいってるけど。ともあれ、ごめんねアヤちゃん。二人にバレちゃったよ許してくれ。俺にはもうどうする事も出来ない。

もう一度アヤちゃん大丈夫かなぁ…と狭い天井を見上げてみた。相変わらず景色なんて変わらないけど。

不意にカイリューが俺の袖を引っ張った。何だと見ればしたっぱ達と幹部二人に囲まれたゴールド君とコトネちゃんを発見。どうやら奴らは袋叩きに彼らを潰す気らしい。全くセコくてズルい事しか考えられない奴らだ。うん、やっぱりロケット団にマトモな人間は居ないね。

後ろのキラキラする二人に若干気圧されながら、俺はカイリューにドラゴンダイブを命じた。



(何故かな。アヤちゃんこっちに来てるような気がしてならないんだけど)








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