act.30 悪人面が見たいんだよ





「サンダース、シャワーズ。出ておいでー」



ゴポリ、と泉の水が大きく唸った。これは数体が水上に出て来るのも時間の問題だ。

ワタルさんに半場強制的に連れ去られ押し付けられて…因みに怒りの湖にはボク以外誰も居ない。暴れるギャドスが危険だから寄り付かなくなったのだろう。

興奮したギャドスは怒気が下がるまで水上に出て暴れ回るだろう。あんな巨体が沢山暴れたら森が潰れて湖が壊れる。まぁ押し付けられてしまった以上は、自分以外誰も居ないのだしやるしかない。……不本意だけど!

ボールを出す気力も何だかやるせなくて、二匹の名前を呼べばポン!とバッグの中から開閉音が鳴って光と共に姿を表した。



「………よし、やるからにはやらなきゃね。平和に行こう、平和に!穏便に!だってボクはしがない普通の一般市民だもの!ギャドスが顔出す前n」



ザバーー!!!



「グオオオオオ!!!」

「わぁああああ!!!!」



サボーンと数体のギャドスが湖を盛り上げて吠えながら姿を表した。きっとまだ腐る程出てくるんだ。すかさずサンダースが全力の雷を放つと水を通して全てのギャドスに電気が通る。体の隅々まで電流が流れて威力も二倍に上がった筈、だけど。

雷をもろに受けたギャドス達はパリパリと電気の余韻を残したまま海にズブズブと沈んで行った。



「……んー……やっぱり数が、多すぎる…」



とりあえず泉の中がどうなっているのか見たい。ギャラドス以外の他の野生ポケモンがいたら可哀想だ。
ボクはカイリューをボールから出して背に乗ると丁度湖全体を見渡せる高さまで飛んでもらって。

そしたら湖に身動きが取れないくらいの個体がもう蠢いている。

おそらく、もうギャラドス以外の個体はいないだろう。

たぶん食い尽くされている。

でも電波で無理やり進化させられて暴れているなら、殺してしまうのはダメだ。



「“金魚鉢”。いけるかな」



地上にいるサンダースに向かって両手でOKサインを出すと微弱な電流を湖全体に張って流し出す。

少しずつ、少しずつ。

弱めの火を通すように。

電気を通して体が麻痺していると思わせない程の電流だ。



「超絶技巧な電気コントロール。うちのサンダースの専売特許」



そして徐々に電気で全身麻痺したギャラドスがゆっくりと浮いてくる。湖の中はサンダースの電磁波により黄色から蒼色にゆっくりと変わり、電圧を変えている。

んー流石です。サンダースさん。



「シャワーズ!泉の真上にジャンプ!」



水流に乗ってシャワーズがジャンプした。

渦潮で足場を作るとそこに乗る。



「冷凍ビーム!中は凍らせないで。表面だけガッツリね」



シャワーズが冷凍ビームで湖全体を凍らせる。

ギャラドスはなんたって海の王者だ。いつ回復してまた水上に姿を現すかも分からない。…ワタルさん達が事を終わらるまで、それまで痺れてて貰おう。

ビキンと固まった湖はスケートリンクの様に固まった。ギャラドスは水タイプのポケモンだし凍死は、しないと思う。しかも最近凄く気温はやけに熱いし明日までには溶けるだろうし。



「………え、これだけ!?」



まさかボク、これだけやってあと帰るの!?ねぇワタルさんそれって酷くない!?酷いよね!

ワタルさんに押し付けられて数分、たったの数分で“頼み事”は終わってしまった。一人ツッコミを繰り返すボクを白い目で見ていたサンダースが小さく息を吐く。
クイ、と袖を引っ張られ、何だよとサンダースに視線を移せばパリパリと小さく電気を放電していた。その瞳には充分なやる気が宿って、



「………そうだよ!ボク前からロケット団のボスの顔、直に拝みたいと思ってたんだ!」

「ブイー!?」



いや違ぇよ!何言ってんだコイツと体のトゲトゲした針でブスリと太ももを刺された。かなり痛い。

ロケット団。今から6年前、カントー地方を暴れ回り最悪な悪事を働き続け、ポケモンの全てを手に入れようとした黒の集団。

そしてそのロケット団の頂点に立つ司令塔、圧倒的な強さを持つのがボスのサカキとか言うオジサン。一回写真で見たけど笑える程の悪人面だった。

まぁこの人達はレッドさんによって一夜でズタズタにされたって聞いたけど。



「ボスの顔が見たい!悪人面って……素敵だもん!!行くよぉサンダース!」

「ブイブーイ!!?」



サカキさんを見たいが為にロケット団アジトに向かい走った!まあワタルさん達もいるから危険はないだろう。
それにちょっとコトネちゃんのやることも気になりすぎる。

こりゃ行くっきゃねぇ!




(段々と思考が外れているのは気にしない事にする)








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