act.26 とんでもなかった





ピンポーン



「…………」



ピンポーン



「…………」



ピンポーン



「……………」



ピンポーンピンポーンピンポーンピンポンピンポンピンポンピンポンピンポーン



「ああああッ!!うっさいわぁぁああぁぁあ!!!!!!」



ガバッ!!と毛布を壁に叩き付けて(カイリューがやれやれと毛布を拾い上げてたたんでくれた)玄関の先をギッと睨み付けた。

あれからやっとの思いでレッドさんから離れて逃げ帰って…死んだように眠っていたのに今度は来客者の呼び鈴の嵐だ。きっと丸一日眠ってたかな。その眠たい中呼び鈴の連打で叩き起こすなんて…許すまじ!

ドッスドッスと床を踏み歩いて玄関へと向かい、ドアノブをガッと掴んで勢い良く開けた。



「……………」

「……やぁ、まさか俺を無視し続けるなんて君も命知らずな子になったね」

「………すいません」

「わかれば良いんだよ」



……真っ赤な髪。

ドアを開けた先には凄い笑顔で腕を組んで何か黒いものを背負った自称ドラゴン使いのワタルさんが居た。

あれ、この人こんなに黒い人だったけなぁ………いや黒かったか。なんて考えて下手に反発すると何仕出かすか分からない為、素直に謝った。素直は良いことだよ、とイケメンを代表するその笑顔がニコリと微笑んでポン、と頭に手が乗せられる。



「………」

「…?なんだい?」

「…あ、いえ」



……一瞬、一瞬だったけれど。その手がレッドさんと被った気がしたのは内緒。さっき玄関を開けて、赤が目に飛び込んで来た事でレッドさんじゃないかと思ったのはもっと内緒だ。

ボクを起こしてまで、こんな所まで来て、さぁて何しに来たんだ貴方は!と問いかけようとした時、ワタルさんの目が驚いたように見開かれていた。



「…………何ですか?」

「………い、や。君も、大人になったな、と……いやでもまさか」

「は、はい?」

「……アヤちゃん、最近誰かと一瞬に居た?」

「え?最近ですか?レッドさんですけど…ちょっと緊急の用事があって昨日シロガネ山に…」

「……………レッド君、が」



それ、本当かい?……ああ、でも、そうだな。反動で衝撃が、執着心が凄そうだ……とかなんとかブツブツ言っているワタルさんにボクはますます首を捻る。

何がだ、と訝しげな顔をする自分をじっと見たワタルさんはニヤリと口端を上げて微笑んだ。

ガシ!と肩を勢い良く捕まれてボクはヒィ!と小さな悲鳴を上げた。



「いやぁその様子だとまだ無事なようだね!良かった良かった!まだ早いもんね」

「え、な、何が何だか分からないんですけど……!!」

「普通は気付くものなんだけど……。鏡見たかい?付けられてるよ、首」

「だから何…………が、」
 


言い切る前に、ワタルさんは自分の懐を探り手鏡をボクの目の前に掲げられた。

鏡は首…首筋を写し出し、その首には赤い痕が。

…………………赤い、痕?

これは目の錯覚か。本能的にゴシゴシと目を擦りもう一度鏡を見れば赤い痕がそこにあって。



「や、やられた……」



鏡から見える位置だけじゃない。ワタルさんがボクの背後に回り込んで「ちょっと失礼するよ」と言うと徐にボクの髪を上げた。そしたら「ううわ……」とか言いながら、口元を引き攣りながら洗面台の鏡を指さした。

見ろ、ということだろうか。



「……っ…な、なにこれぇぇ……」



鏡で首の後ろを見ると、夥しい数の赤い痕が刻まれていた。

もうびっしりと。

いわゆるキスマークである。



「俺が聞きたいよ…何がどうなって付けられたのこれ。どう見てもキスマーk」

「言わなくて良いですよ!!?」



何で。いつどこで付けられた…?いやもしかしたらそもそもキスマークではないかもしれない。違うかもしれない。ほら虫に刺されたとか…………、……………。

いや、待て、もしかして。



「あの時かァァッッ……!!!」

「あははアヤちゃん顔真っ赤なのか真っ青なのかわかんないね。まぁ気を付けなよアヤちゃん!伝説の男でもポケモンしか脳にない奴でも男は皆、無論レッド君も人並みに性欲はあr」

「悶絶醤油目潰しッッ!!!」
「ぐぁあああぁああ!!目がぁああああああ!!!!」



恥ずかしさで死にそう。



(リオルポケギア持って来て!!あんの伝説の変態めええええ!!!!)

(ばう……)

(アヤちゃんそれレッド君に言えんの?)

(ムリっす……)










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