act.19 小さな迷子
「ウィンディ、あっち!香ばしい匂い…これは!モモンの実!!」
「ウォーン!」
ウバメの森をウィンディに乗って今日も元気に木の実狩りしているアヤです。
昨日いろんな事あったけどボクの性格は。
数少ない良いところはね、あんまり気にしないところです!
クソアマだのなんだの言われたけど気にしない。
もう吹っ切れたもんね!
戦利品(只採っただけ)の大量の木の実が入ったカゴを持って森を走る。ウィンディの背中に乗って正面から受ける風が気持ち良い。
因みに、今日はおやつにポフィンを作る予定である。久々…というかリオルが作れ作れと足を蹴って来るので仕方無く、と言った感じだ。
目当ての木の前に止まり、ボクはウィンディの背中に立って木の実を収穫していく。
思ったより多めに作れそうだなぁ……。
「……ま、迷った……!!」
「嘘ッッーーー!!!??」
「…………ん?」
ウバメの森に響く男女二人の声がした。
思わず木の実に伸びる手を止めて後ろを振り返るが誰も居ない。まぁ当たり前だけど。
それにしてもこんな奥地に人なんて珍しい。さっきの声を聞く限り、どうやらその人達は見事に迷ったみたいだけど。
きっと近くに居るだろうなぁ… 。
ウバメの森は案外奥に進むに連れて強いポケモンが結構生息している。
シロガネ山までとは行かないがチャンピオンロードに住まうポケモン達より少し弱いくらいの強さを持つポケモンだ。新人トレーナーならひとたまりもないだろう。
「ウィンディ、一応行ってみよう」
「ワン!」
地面を蹴り上げ、木々を避けながら走るウィンディにしがみつきながら前をふと見るとまだ随分小さな…10〜13才くらいの男の子と女の子が居た。帽子を被った女の子は同じく帽子を被った男の子の襟を掴み前後左右に揺らしまくり、男の子は真っ青になっていた。
「迷ったですって!?あんたどうすんのよゴールド!!だからあの道を右に行こうって言ったでしょう!!?どうするのよもう日が暮れちゃうじゃないの!私のポケモンもう体力無いんだからね!!?」」
「ごごごごめんってコトネ!まさかこんなウバメの森で迷うなんて思って無かったんだよぉおお!!」
「その迷うなんて思わなかったウバメの森で迷ってんのは一体どこのどいつなのかしら!!?あ"あーん!!?」
「ごめんってッー!!え、でも迷ってるのは俺だけじゃなくてコトネも一緒じゃ…」
「そのあんたに着いて行って私も迷ったんでしょうがぁあああああ!!!」
「ぎゃああああああ!!!!!!」
「……………」
迷子の二人を見つけた、は良いが。
…なんておっかないんだろう。
道を間違えた男の子…帽子を被った黒髪で金色の目をした男の子を、白い帽子を被った茶色い髪を二つに分けた可愛らしい女の子が荒々しくローリングプレスをしていた。
プロレス技の第一歩ですね!
しかもその隣では女の子の手持ちであろうチコリータが彼のヒノアラシをツルの鞭で縛り上げ、頭の葉っぱで叩きまくっていた。…目が女の子と一緒だ。ヒノアラシは大泣きしている。
な…何だっけ。こういうがSMプレイって言うんだっけ……。
ペットは飼い主に似ると言うが、正にそれだ。ポケモンはトレーナーに似る!(ボクのポケモンは多分そうじゃないけど)
これには流石にウィンディも引いてしまったらしくボクの後ろでじっとしていた。
…………と、とにかく
「……こ、こんにちは…?」
「「!!!」」
一先ずあいさつから!
(人間バトルよりあいさつからが常識だと思うんだよね)