テキスト | ナノ

「何故オレのユニフォームを描いているのだ、」

「描くものが欲しかったの。丁度見付けてさ」

「部室だ、あるに決まっている」



絵を描くために鉛筆を持って、近くにあった緑間のユニフォームを置く。
持ってきた画用紙に描いていると休憩中なのか緑間が部室に入ってきた。
それを見た緑間は呆れたように言って私の頭をくしゃっと乱した。
ユニフォームを描かずに風景を描けばいいだろう、とか。
人物が苦手なら人物を描くことが人事を尽くすことだ、とか。
口を開けばぷんすかと怒ったように説教ばかり。
そんな口うるさい緑間の言葉を聞き流して鉛筆を走らせる。

私は好きな物を好きなだけ描きたいと思っている。
だから緑間を描きたいと思ってそれに関するものを描いているだけ。
バスケしている姿を描きたいけれど周りに迷惑になるかと思って描いていない。
本当は緑間にモデルになってほしくて、でも絶対断るからしないだけで。


別に美大に入りたいわけじゃないし、部活だって中途半端。
緑間はそれが気に入らないのだろうけれど私は趣味として楽しんでいるだけだから。




絵を描くのが好きで、緑間を描くのが好きで、それだけじゃ駄目なのだろうか。



「今度…、試合の時に緑間を描いていい?」

「いつも言ってるが、オレじゃなくて他の奴を……」

「私は描きたいと思うのを描く。他の人じゃなくて、緑間がいいの」

「…………動いていると不完全だろう。部活が終わったらモデルをしてやる。







―――今までの人事を、見せろ。下手だったら許さないのだよ」



一度も描かせてくれなかった緑間が了承してくれて、しかも自らモデルになってくれると言ってくれて。
そんなの、嬉しくないわけがない。

恥ずかしいのか顔を見せずにさっきよりも強く私の髪の毛を乱して部室から去っていった。
緑間の触れた所が、緑間が言った言葉が、私を熱くさせる。
今までの想いが爆発しそうなほど心臓が脈打っていてどきどきが止まらない。
そんな気持ちを誤魔化すように絵を完成させようと鉛筆を持ち直した。
でも緑間のユニフォームを見て思い出すさっきの出来事に手は止まるばかりで、ほんの小さなことで取り乱す私が笑える。




早く部活終わらないかな、そう思いながらまた鉛筆を走らせた。










081412.245
この後はご想像にお任せしますw
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