テキスト | ナノ

普段から静かに冷静にあまり感情的にならず、物事を淡々としていることに自覚は少なからずありはする。
自分のような職業ではこれが一番良いと思っているし賢い選択だとも思っている。
感情的になるということは負けを意味しているとも思う。


そんな中で仕事中に電話が掛かってきても普段通りに会話をし、放っておく。
そう、あくまでも“普段通り”で接するのだ。



『もしもーし、四木さん?今から一緒にご飯食べに行こうよー!』

「………仕事中だ。それにもう食べた」

『じゃあ、会おう?四木さんに会いたいなー』

「奢ってほしいんだろ、また金欠か」

『あ、バレた?でも会いたいのは本当。ね、迎えに来て』



「…………はぁ、何処にいるんだ」

『ふふ、愛の力で私を探してね。三十分以内に!じゃ、待ってまーす』








抗議しようと口を開いたが直ぐに機械的な音がして一方的に切られたことに気付く。
仕事中だと言っているのに会いたいと言い、金欠だから昼食を奢れと言う。
それを許して迎えに行こうとすると愛の力で場所を探せなんて、お嬢様か何かかあの小娘は。


携帯をポケットにしまい、迎えに行く準備をしようとしたら赤林と目が合った。
厭らしい訳のわからない顔でからかう赤林はいつも通りで冷静に流す。
うちのお嬢様は赤林とも仲が良くて困る。
子供みたいに嫉妬というものはしないが、何もかも話してしまう緩いあの口はどうにかしなければいけない。

大方赤林が吹き込んで話すように仕向けているのだろうが。



「“例の子”の我が儘には甘いですねぇ、」

「別に電話相手が彼女とは言っていませんよ?」

「自分が思っている程、気持ちは隠せてないですよ。他人からしたら丸分かりなんてことも」

「赤林さんは想像力が豊かなことで」



こういう時に鋭く言う赤林の発言は自分を苛立たせるには十分だと思う。
もちろんそんなことは口に出しはしないが、少しくらいの嫌味は言ってもいいだろう。
こんな、何を考えているか分からない男正直御免だ。


さておき制限時間は三十分。
我が儘なお嬢様のことだから早く迎えに行かないと拗ねてしまう。

溜息を吐き、車のキーを取り出した。





* * *





「あ、四木さーん!なんで場所分かったの?」

「なんでって愛なんだろ、」

「超怖い。なんか監視されてるみたい」

「……………………、」

「うーそ!本当はすっごく嬉しい。四木さん大好きっ!」



腹が立つことも何度かある。嫌気がさすことだって多々ある。
それでもこの無邪気な笑顔とか、素直な言葉とかそういうところは良いと思う。
だから我が儘も許してやろうという気になるし、少し甘いのかもしれない。


まだまだ子供で、裏の世界や大人のことを知ったら怖気づくだろう。
本気を出せば我が儘なんて言えないようにも出来る。
無理に手を出してしまえばきっと俺の元から離れて行く。

それをしないのは自分が思っている以上に彼女のことを大切にしているから。




それとも、いい年をした男がこんな子供に本気で惚れているからか。











「本当にご飯は口実なんだからね?」

「さあ、どうだか」

「自分のご飯代は自分で出すよ、当たり前じゃん…」

「惚れた女の飯ぐらい奢るに決まってるだろ」

「、っ!もう一回言って!ねえ、嬉しい!もう一回!」

「…飯ぐらい奢る、」

「その前!録音するだけだから!あっ、ちょっと歩くスピード遅くしてよ!もー!」






ただ、彼女の前じゃ少しくらいは感情的になっている気もする。










081612.245
私はタメ口四木さんを全力支持しています。
そしていつも四木さんは我慢しているドゥフ
return

×
「#エロ」のBL小説を読む
BL小説 BLove
- ナノ -