互いに酔っていたんだと思う。
そうじゃなきゃ、こんなこと起こらなかった。
自棄酒に近い飲み方をしてフラフラしながら帰路を辿っていると前から歩いてくる見慣れた女。
土方の彼女だ。
彼女も相当酔っているようで目の焦点が合ってない。
虚ろな目でフラフラ歩いている奴を見て人のことは言えないが、情けないと思って家まで送ってやろうと声をかけた。
「よーお、ベロベロじゃねーか」
「んー……、あっは!銀時さんじゃないですかあー!あっはは!くるくるパー!」
「お前こそ笑える顔してんじゃねーか、ははははーっ!ぶっさいくだな、オイ!」
「うっせーごらぁ!おめ、侮辱罪で訴えんぞー…」
「その前に多串君に殺されるわ。危ねーから送ってやるよ……んだよ、」
「多串君なんかなあ、多串君なんか……っ、私のことなんて、何とも思ってないんだよぉ…」
思い出したように泣き出す彼女に戸惑いつつも落ち着かせる。
そういえば泣いたように目が赤かった。
多串君と何かあったからこんな風に酔っているのだろうか。
落ち着いてきた頃には怒りになって俺に愚痴を言ってくる。
あんな奴彼氏なんかじゃない、だとか。
本当は私のことなんて好きじゃないんだ、だとか。
あの土方がヤキモチ妬いたりするんだから好きじゃないことはないと思うんだが。
なんていうか、話していると俺に敵意むき出して睨んでくるくらいなのに。
「あ、家にビールあるから!送ってくれたお礼にほら、入って入って」
「いや…俺、怒られ………まーいいわ、ここまで酔ったならもっと飲んでやる」
「おっし、こい。ほれほれ、ビールじゃビール!」
「飲み比べすっか?多串君じゃ相手になんねーからよー」
「まかせろ。私はザルだ!」
気付けば時計の針は二時をさしていて、そこから変な雰囲気になっていったと思う。
眠たくなってきたのか、隣にいるマヨラーの彼女が俺に凭れてくるようになった。
格好は暑いと言って脱いでいたせいで薄着で。
汗でひっついているシャツにとても欲情したことが印象的。
酒のせいということにして逃げているが本当に酒のせいで、判断が鈍ったんだ。
今なら簡単に押し倒せるんだろうか、なんて。
押し倒すつもりなんてなかったのに魔が差した。
とん、と軽く押したら案の定倒れていって、少し驚かせてやとうとそのうえに覆いかぶさった。
「…うーわー、酒臭いよ。その口どうにかしろよー」
「お前だって酒臭い。つーか、焦らねーの?」
「あっはは、相手銀時だし…?ちゅーしたら酒臭いの気にならないかしら?」
「…………知らねー、」
余裕なのに腹が立ってその唇にかぶりついた。
本当に、酔ってたんだ。
拒むこともなく、首に手なんか回してきちゃって。
ああ、そういう流れなんだって思うと歯止めなんて全く効かない。
理性なんてないに等しいほど半分意識を酒に持っていかれていた。
最低だな、ってどこか頭の片隅で思いながらも止まらないわけで。
心の中で謝りながら全部終わらせて、気がつけば朝だった。
ぼーっとした意識の中で迎えた朝に思い出したのは土方のこと。
「あいつ酔うと甘えてきて大胆になるんだよ、絶対お前と一緒には飲ませねーからな」 闇に包まれた気がした。
081812.245
坂田は悪くない、私が悪いんです。
(title:蘇生)
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