むかーしむかし、ある所に。ガランとした物語がありました。辺りにはただ何にもなく、二人の女性がいました。
二人はそれぞれの事を、それぞれの見た目通りの色合いで「赤の女王」「白の女王」と呼び合っていました。

「白は始まりの白。何もかもが生まれる白。」と白の女王は言いました。
一方赤の女王は「私は終わりの赤。流れる血のような赤。」と言いました。

彼女らは互いが異なる存在であれど、互いを理解しようと努力し、尊重するように二人は生きてきました。何故なら此処には二人しかいず、二人だけが世界の全てだったからです。

そんな平和な毎日を送っていた二人でしたが、ある日誰かがその物語に落ちてきました。彼女は他の世界からきた住人で、二人はこの人物を『アリス』と名付けました。

不思議な事に。『アリス』がきた事により様々な生物が誕生し、様々な彩りや風景が出来上がりました。『アリス』の力で、今まで真っ白だった絵本のページが描かれたのです。
『アリス』が来てからの日々は素晴らしく、楽しいものでした。毎日誕生日でもないのに祝い、様々な生き物達と共に歌って踊って過ごしました。

そうした楽しい日々が毎日続く訳もなく。ある日突然に『アリス』がしにました。アリスは死に際に「死ぬ前にもう一度、お家に帰りたかったなぁ」と言いました。

『アリス』の死を二人は大変嘆き、苦しみました。アリスの死後、帰る方法も見つけたのですが、もうあの『アリス』は何処にも居ず、また、もうこの世界では何も生まれないのです。

赤の女王は言います。「アリスが死んだこの世界では、何にも生まれない。だからアリスが一人では足りないんだ。この世界の為にアリスを増やそう」と。
白の女王は「そんな事をしてはいけない。アリスにとってここは家ではないのよ。アリスは最期になんて言った?」と。

「白の女王、貴女はいつも綺麗事ばかり!アリスがいなくなった後の世界で、私達が一体何を出来ると言うのかしら?アリスがいたこの世界を守れるのは、一体誰!??」
「赤の女王。それでも何かの犠牲を強いていては、何れは綻びが出来ると思うの。貴女のやり方はいつも乱暴で見てて不愉快だわ。例え滅びるとしても、これ以上犠牲を増やしてはいけない」

事の始まりは『アリス』の死でしたが、互いに深い溝の出来た女王は、自分の意見を尊重する為に戦う事に決めました。

赤の女王は「アリスをこの世界に閉じ込め、物語の世界を永遠にする為」に。
白の女王は「アリスを元の世界に何れは帰し、物語の世界を平和にする為」に。
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