(結局泉からおめでとうって言ってもらえなかったなあ…)


部活後、コンビニの駐車場できゃっきゃとはしゃいでいるメンバーを遠目に思う。別に期待してたわけじゃないよ?そもそも誕生日の存在自体覚えてるか分かんないしさ。彼女でありながら寂しい気もするけど…でも、ほら、泉は部活で忙しいしね。うん。


(…今日も残りあと少し)


心の中でため息を吐きながら時間を確認するわたしは最後まで未練がましい。けどさ好きな人に祝ってもらいたいって思うのはあたり前じゃない?彼女って立場なら尚更そうだと思うんだよね。そもそも「おめでとう」の一言すら言ってもらってないのに…!

そう思いながら鞄の中をそっと見る。そこには綺麗にラッピングされたプレゼントの数々が。言わずもがなわたし宛に友達がくれたもの。おめでとう、の言葉と共に。


(ま、いーけどさ…あの泉が覚えてるわけないだろうし…最初っから期待なんてしてないしね。……ちょっとしか)


もうすぐ今日が終わる。きっと他の人にとってはいつもと変わらない日常。だけどわたしからしたら違う。今日はわたしが生まれた日。大好きなお父さんとお母さんの子供として生まれた大事な記念日。・・だけど、わいわい騒いでいるメンバーを見ていつもと変わらないことを認識せざるおえなかった。


「なあ」

「!」

「腹減ってね?」

「…え、?お腹?」

「おー」

「…そりゃ空いてるけど…」


気分が落ち込んでいた時、突然泉が話しかけてきた。…から正直ちょっと…いやかなり期待したのに泉の口から出てきた言葉は予想外の言葉で、思わず聞き返してしまった。でもわたしの心の中なんて分かるわけがない泉は平然とした態度で応答するもんだから、


(…期待してる自分がバカみたい…)


「じゃあこれやる。俺もういらねぇから」

「は?何こ…」

(!!)

「……泉、…ありがと!」


ざわざわと賑やかだった景色が、空間が、世界が、一気に自分だけの物になったのを感じた。
だって、だって、泉から渡されたアイスの棒には「あたり」の文字と一緒に「おめでとう」って書かれてたから。嬉しすぎてこのあたり棒交換できないよ…。




「あっれー?なんで二人して顔真っ赤なのー?」

「…!」「…っ」

「ばっ!水谷…っ!空気読めっ!」

「え?何が?なんのこと?」

「え、えっと…な、何でもな、」

「今取り込み中なんだよ。…つーかいいとこなんだから邪魔すんな」

「!(なんだか幸せすぎてどうにかなってしまいそうだ。…今日のケーキいらないかもしんない…)」

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