入れるだけ入れておいて動かずにあたしを抱きしめ続ける凄腕さん。
様子がおかしい彼の顔はあたしの首筋あたりに埋もれていて見えなかった。


「どうしたんですか?」

「お前が、清香がなんとかして……」


いつもは割と早口なのに、ゆっくり話し始める。子どもが絵本を読んでるみたいに、たどたどしい感じと痛いくらいの抱擁。


「俺のしょうもないプライド、清香が……本当は俺だって、わかってるから」

「凄腕さん……」

「もうちょっと待ってて。頼むから」


うん、って頷いたのは反射的にだった。頼むなんて言われたら頷くしかないじゃない。

そしてもう一度凄腕さんの言葉を頭の中で繰り返す。

でも、言葉が少なすぎて意図がよくわからなかった。

それとも言葉が足りない分はあたしの都合のいいように解釈していい?

本当は凄腕さんだってちゃんと好きって言いたいって、思ってていい?


「待ってるね……」


再び唇を合わせたのを合図に抽送が始まった。突かれるたびに押し出される吐息が凄腕さんの唇に当たる。


「清香は俺のだよな?」

「う、うん……っ」


あまりにも不安げに聞くから、慌てて返事をした。
今まで彼女だなんて思った事ないのに、やっぱりあたしの気持ちはとっくに凄腕さんのものだった気がする。


「俺の好きにしていいか?」


もう好きにしてるくせに。

いつも威張ってる人の不安げな顔なんて、反則すぎるよ。
こっちまで切なくなっちゃう。









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