「悪い……」
ぼそっと聞きとれないくらいの声だったけど、確かにそう言った。
プライドの塊みたいな人なのに。この人が謝ってるのなんて聞いた事がない。丸めた体のまま目線だけで凄腕さんを捕らえると、居たたまれないような顔をしている。
初めて見る、戸惑った顔にあたしの高ぶっていた悲しい感情はどこかへ行ってしまって、手を伸ばした。
「口を……吸って……?」
「ん?、あぁ……」
あたしの首と布団の隙間に手を入れて腕枕みたいに抱き寄せる。近づく唇からはあたしの匂いがして、羞恥を覚えた。
唇が触れる一歩手前であたしは目を閉じて、その感触に愛しさを感じる。
やっぱり、大好き。
こうしてると嬉しい。
入ってきた舌に自分の舌を重ねながらぎゅっとしがみついた。凄腕さんもあたし以上に力を込めて抱きしめてくれる。
「凄腕さん……」
「あぁ?」
「あたしの事好きですか?」
黙ってしまった。いい感じだったのに。素敵な口付けだって思ったのに、ちゃんと聞いたら答えてくれない。
「言ってよ……」
「言えない」
「どうして?」
「どうしても駄目。言おうとすると尻がむずむずする」
「なにそれ」
「恥ずかしいんだよ、馬鹿!」
「いい大人が好きくらい言えなくてどうするんですか」
「うるさい、そんなに言って欲しかったらお前がなんとかしろ!」
めちゃくちゃだ。この人。
逆ギレもいいとこ。
大体それってあたしにどうにかできる事?なんて腑に落ちない顔をしていたら脚を抱え上げられて、アレをあてがった。
「や……っ!」
「入れるぞ」
「だめ、もうっ……」
一気に根元まで突っ込んで、そのままあたしを抱きしめる。
好きって言葉の代わりに入ってきたモノは熱くて、固くて……
これと同じくらい情熱的で揺るぎない愛が欲しいと思った。
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