「もう消していいかな?」

「あ、左側残しておいてください」

「ん、じゃあこっち消しちゃうね」


授業中、黒板を消しながら背中に視線を感じる。じっと見据えるその目に変な汗をかいてしまう。


「この人物の心情がある行動に表れてっ……ん、」

「「「???」」」

「ごめんなさい。なんか咳出そうになっちゃった。え……と、何言おうとしたんだっけ……」


下着のなかで振動する小さなオモチャ。芹沢くんのポケットにはリモコンが入っていて、自由に操れるようになっている。スイッチが入っては切れて、じわじわと私の体を熱くしていく。

いつ入るかわからないスイッチに緊張して授業なんてボロボロだ……

生徒には笑われるし、小さいけれど振動音に誰か気付くんじゃないかって、気が気じゃない。


「先生、なんか顔赤いですよ」

「そ、そう?熱っぽいのかな……っ」


また動き出したオモチャに体が甘く疼く。今度はすぐに切れてくれなくて、粒のあたりで振動し続ける。

芹沢くんを見ても知らんぷりでノートを書いている。


「えーと、この時の彼の気持ちなんだけど、どこに表れているかな、芹沢くん」


必死に「もう止めて」って目で訴えるけど芹沢くんは淡々と答えるだけ答えてニコっと笑った。モジモジしながらの授業に何人かは不振に思っているみたい。

なんかもうみんな気づいているような錯覚さえ起きる。


「先生、体調悪いなら休んでいいですよ。僕らコドモじゃないんで自習くらいできますから」

「ありがと……でも、平気だから……」


こんな事で授業をやめてしまう訳にはいかないもの。
大丈夫。段々と振動にも慣れて感覚が鈍ってきた。
このまま耐えられるはず。






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