「お疲れサン」
「きゃ!」
一日が終わって冷たい缶コーヒーを頬にくっつけてきたのも雨夜先生だった。職員室で生徒の名前と顔を覚えようと写真とにらめっこをしている所だった。
「まだやってんの。トロい奴」
「む……すみませんねぇトロくって。そういう雨夜先生は何してらっしゃるんですか。こんな時間まで」
あなただって同類じゃないの?と皮肉たっぷりにそう反撃した。
「恭介。雨夜だとオヤジと紛らわしいから名前で呼んでよ、杏珠チャン」
「あ、そうか。理事長も……もしかして私、もの凄く失礼な態度取ってます……?」
そう言えばこのお方は偉いさんのご子息であって、本来ならもっと緊張して接するべき人なのだ。
「かなり。いないよ、理事の息子にあからさまに突っ掛かってくる奴」
「すみません……だって……恭介先生がいじわる言うから……」
バツが悪くてもらった缶コーヒーをくるくると遊んだ。
それを恭介先生が取ってプルタブを開けてくれる。
「ありがとうございます」
「いいよ。堅っ苦しい学校がちょっと楽しくなりそうで俺は嬉しいぜ?」
「学校、嫌いなんですか?」
「キライ。面倒くさいの苦手なんだよね。いつもは葵チャンに代わってもらうんだけど、あいにく出張でさ。真面目にやってたらこんな時間」
葵チャンっていうのもこの学校の先生なんだろう。まだ会った事がない彼に私は思わず同情した。
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