『放課後の職員室で』全8ページ
男尊女卑と言うからどんな扱いを受けるのかと思いきや、案内をしてくれた雨夜先生も近寄りがたそうではあったが親切だった。
冷たそうだが整った顔立ちに低めの声。背も高くスーツのよく似合う人。
華奢な銀のフレームのメガネがよりクールな雰囲気を醸し出していた。
フラットな性格に見える彼の話し方に飾り気がなくて意外だなとも感じた。
そして案内の途中で驚いたのが、非常階段。
──────……‥
「ちょっと休憩。アンタも吸う?」
「え……ダ、ダメですよ!校内は禁煙ですよね?」
慣れた手つきで内ポケットからタバコとライターを取り出し火を点けた。
銀に光る細身のジッポが高そう。
「だから隠れて吸ってんの。ここ、俺の休憩スポット」
校舎の脇に備え付けられた非常階段。レンガ調のタイルがあしらわれた非常用にはもったいないくらい立派な階段だった。
日陰にあり、わりと涼しい静かな場所。確かに隠れて吸うには持ってこいかもしれない。
「えっと……それから私は寺内杏珠です。アンタじゃありません」
「杏珠チャンね。意外と気が強そうだ」
ククッと馬鹿にしたように笑ってタバコを吸う。こっちだって意外だと思った。
意外と不良。口には出さなかったけど。
しばらくそこで座っていた。会話は全く弾まなかったけど、風は心地よかった。
雨夜先生の青味がかった黒髪が風でそよぐ。よく見ると耳たぶにはピアスの穴らしきくぼみがあった。
やっぱり不良教師だ。
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