「こちらは今日から来て下さる寺内杏珠先生だ」
「寺内です。よろしくお願いします」
「芹沢です。生徒会なんて雑用ばかりなので忙しい時は僕を使ってくださいね。何なら校内の案内でもしましょうか。ちょっと分かりにくい造りなんです」
そう言って爽やかに笑う芹沢くん。今朝とは大違いだ。もしかして人違いかと思うほど。
まるで少女漫画から抜け出てきたような好青年だ。
歳に似合った清々しい笑顔は痴漢どころか虫も殺さないといった様子だった。
「案内は雨夜先生に頼んであるんだ。でも、これからもよろしく頼むよ」
「わかりました。では球技大会の草案、ここに置いておきますので」
「ごくろうさん」
失礼しました、と出て行く時に芹沢くんは私ににっこりと微笑んだ。
まるで今朝の出来事なんて覚えていないように。
「では、職員室に行きましょうか。雨夜先生も来てるはずです。理事長のご子息で化学を教えてらっしゃいます」
男しかいないこの学園で、私はうまくやっていけるんだろうか。
少し不安を抱えながらも広い廊下の真ん中を背筋を伸ばしてゆっくり歩いた。
to be continued……
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