一連の行為が終わり、疲れて寝てしまった恋人をまじまじと見つめる。汗ばんだ肌や赤くなった目元が麗しい。誰にも見せたくない光景だと思う。
このまま一緒に寝てしまえばきっと良い夢が見られるのだろうが、このまま放っておくと酷い有り様になるのは経験済みなので後始末をする。彼の体を拭いたり濡れたシーツを取り替えたりとやることは山積みで、けれど一度も面倒臭いと思ったことはなかった。どちらかと言うと、楽しい。情事後のお陰ですっかり目覚めてしまったので、動きも早い。とりあえずシーツは明日自分の家に持っていこうと決めた。

(…それにしても、)

二人用のダブルベッドから、跡部から貰った高いソファへ恋人を移動させても、恋人は起きる気配が全く無い。よっぽど疲れたのだろうと思うとなんだか申し訳無く思う。今回行為を誘ってきたのは彼の方だったのであまり考えてはいけないのかもしれないが。


***

「明日は午後出勤やから…やる?」

恋人にそう言われて、心動かない男などいない。多分最近してなかったことを地味に気にしていたのだろう。俺は我慢強い方ではないから、何しでかすか分かったもんじゃないと思われてたのかもしれないが。

「…良いの?」

最近やってないということは、結構溜まってるということで、つまり後にかなり響く可能性があるのだ。底無しの性欲を抱えた恋人を持つと相手はつらいだろう。他人事でしかないが。
痛いのは俺じゃない。つらいのも俺じゃない。俺はただ、気持ち良くなれる。すごく不公平だ。それでも俺は、したいかしたくないかを聞かれれば答えは一つしかないのだ。


***

真新しいシーツに取り替えて、寝ている恋人を元に戻す。彼の寝息は俺と違って小さいので、耳を傾けなければ聞こえない。それが時にとても心配になるのだけれど。

(…それでも、侑士の寝顔を見るのは好きだなぁ)

軽い不眠症の気がある彼は、寝ることにあまり執着していない。睡眠よりも読書を優先するタイプの人間である。俺からしたら信じられない話だ。だからこそ彼が眠っていると安心する。

(…夢見てるかな、だとしたら楽しい夢だと良いな)

夢なんて見ていないかも知れないけれど。それでも夢の中でも幸せになって欲しいなぁと思わずにはいられない。