白石と同棲を始めてから二年が経った。
白石とは高校卒業を期に同棲を始めたので、二年目、つまり今年でちょうど二人とも20になる。
大人になる瞬間まで白石と過ごせるなんて…こんな幸せでいいの?ってぐらい幸せ。


「謙也ただいまー」

「!しらいしっ!!」

玄関先で白石を出迎える。ぎう、と抱き締めてお互いにキス。
だけど『お風呂にする?ご飯にする?それとも…ケ・ン・ヤ?』なんてベタなやり取りは流石に"もう"やらない。えぇ、やりませんとも。
だって白石の返事は当然の如く、俺しか選ばへんし。まぁ良く考えれば愛されてるしるしやな〜なんて思う。
でもしっかし、逆にやってた時期が恐ろしい。俺らも若かったんやな、うん。


もうこの流れでわかるとは思うが、白石はちゃんと仕事をして働いています。
白石はやっぱり、成績が優秀だった事、内申もそれなりに良かった事もあってか直ぐに職に就けた。
んで、こうして二人でやっていけている。
……でも実質、二人ではなく白石だけが頑張っていると俺は思う。
俺は仕事をするわけでもなければ、家事(と言ってもご飯を作るだけなので)もロクにこなせていないと思っている。
もちろん子どもなんてのは居ない……作れないワケで。
どうしても白石だけに負担が行ってしまうのは言うまでもないだろう。
これでは不公平すぎる。

「しらいしっ、俺、仕事したい!!」

「もう!大丈夫やて!!俺は謙也には仕事やなくて、家の事任せたいの。」

「せやかて……っ」

なんて白石は笑顔で言ってのけるが絶対辛いに決まってる。
まだ20にもなってないのに……きっと近いうちに体壊すわ…。

「や、やだ……」

「え?……ケンヤ!?」

「白石が死ぬなんて俺嫌d「ちょちょちょお待ちい!!なに勝手に殺してんねん!!」

「やって白石が一人で何でも抱え込もうとするから…」

「……」

「俺ら二人でやっていこう、て決めたやんな?」

「…………せやな」

するといきなり白石は顔を伏せ、少し唸ってから頭を掻き照れくさそうに口を開いた。

「あの、……さ」

「ん?」

「け……」

「け?」

「結婚、しよ」

「……っ、え!?」

けっこん、ケッコン、結婚!?
"あの"……結婚!?
俺らじゃあ同棲ぐらいがゴールかと思っとったし、……何でこのタイミング?とかで色々混乱しとったけど、それより何より今は純粋に……嬉しい。

「本当はちゃんとした役職とかもらって、収入とかも安定したら言おうと思っててんけど…………こんな俺でもえぇ?」

「えぇも何も…嬉しすぎるっちゅー話、や…………………ありがとう」

「ん、こちらこそおおきに。
っと、…ちょお待っとって」

「?…うん」

白石は急ぎ足で寝室へと移動した。
暫くして"ガタン!!"という音がしたと思えば白石が帰ってきた。

「え!?何今の音!?大丈夫なん!?」

「おん、実はこんなこともあろうかとベッドの下にずっと隠しとったんや。…………じゃ、薬指出して」

「う、ん」

俺が右手を差し出すと白石は壊れ物でも扱うかのようにそっと俺の手を掴み、その薬指に指輪を通してくれた。

「うん、ぴったりや」

「凄い、キレイや……」

指に光る指輪は決して大きなダイヤなどは付いていない。寧ろとても小さな石だ。
でもどんな宝石よりも光り輝いてみえた。

俺が指輪に見とれていると、「そんな謙也が一番綺麗や」なんて言ってきたから、照れ隠しに軽くこついてやった。