『アサガオの花言葉は愛情って言われてるけどね、もうひとつ意味があるんだ。それはね…―――。』
聞きたくない言葉があの人の口から出たとき、私は涙が止まらなかった…。
「んあ〜!」
澄み渡る青い空を眺めながら背伸びする。今日はなんて気持ちが良い日和なんだか。
眩しいほど輝く太陽が、ぽかぽか陽気にしてくれてるから余計に眠い。
「おっ。ヌイはこれから日向ぼっこか」
ヌイは私の愛猫。窓際の日が当たる場所にヌイは寝転がった。大きく欠伸をして可愛いったらありゃしない。
私はヌイの了承を得ずに勝手に抱き上げ頬を擦りあわすと、ヌイは嫌そうに、にゃあにゃあと鳴いた。
「ははっ、ゴメンよ」
謝って解放してあげると、ヌイは私から逃げるように観賞用植物が飾ってある場所まで走ってってしまった。
「あっ、こらヌイ!倒したりでもしたら危ないって」
一応偽物の植物でも入ってる土は本物の土だから倒されたとしたら後片付けが面倒くさい。
しかしヌイは、その中でも唯一本物の花であるアサガオに寄り添っていた。
咲いてはいないものの、私はアサガオに゙良い思い出゙はない。とある人から貰った花だからと咲く季節まで枯らさないよう手入れしているようなものだった。
「にゃあ」
「ヌイっ」
今度は強引にヌイを抱き上げた。
「ねぇヌイ…アサガオの花言葉知ってる?」
大人しく抱かれるヌイに、私は話しかけた。
「アサガオって愛情の意味らしいんだけど、もう一つあるんだって。それはね…」
どこかで聞いた花言葉を私は同じく言った。
「はかない恋」
初めて聞いたときはアサガオにそんな意味があったんだと知ったのと同時に、アサガオを貰った当時の悲愴感を思い出し、私は涙を一滴こぼした。
あの人と私。
両思いだったと思ったのに、どこで道を歩み間違えたんだろう。それともそういう運命だったって思えば気持ちは楽になるのかな…。
どの道終わったことだし、くよくよしたって今の日常は、何も変わらない。
「ヌイ、一緒に日向ぼっこしよっか」
「にゃあっ」
アサガオの花言葉は愛情と、はかない恋。
儚く散った恋愛だったけれど、あの人の私に対する愛は私にとって今でも心の支えでもある。結末は良い思い出じゃなくても、アサガオが花咲き枯れるときまで、私は気長に愛猫のヌイと一緒に、あの人を待ち続ける。
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