※過去捏造
「スパナはさぁやっぱり卒業したら機械系の職につくの?」
「さあ、決めてない」
「決めてないんだ、私もいい加減進路決めなきゃな〜…」
私の家でスパナはパソコン、私はベッドの上で雑誌を読んでいた
高校卒業を目の前にして私もスパナもまだ進路が決まっていないのにこんなにのんびりしていていいんだろうか
スパナは大学に進むにしても職につくにしても技術者としてやっていけるだろうから将来を心配する必要なんてないんだろうな
「ウチは…うわっ!」
「えっ!?スパナ!?」
スパナが何か言いかけたのと同時くらいにスパナが突然煙に包まれた
「えほっ、ス、スパナ!?スパナ大丈夫!?」
いくら呼びかけても煙の向こうのスパナからは返事がない
何コレ?え?スパナ爆発したの?
次第に煙が薄れてきてスパナが姿を現した
「スパ…」
「おぉ、自分で体験してしまった…」
煙の向こうから現れたスパナは若干油臭いし何故かツナギを着ている。そして何故か妙に感動しているように見えた
「ス、スパナ…?」
「あ、小さい…」
「ち、小さいッ!?」
「…やっぱりここは10年前か」
ツナギ姿のスパナは私を見るなり小さいと呟いてから部屋全体を見渡した
「スパナ、だよね?」
「うん。10年後の」
「10年、後?」
「ちょっと10年バズーカを借りて調べてたら誤射した。まさか自分が10年バズーカを体験するとは思わなかった」
「は、はぁ…」
10年バズーカ?何それ?
10年後ってどういうことなの?100歩譲ってこの人が10年後のスパナなら今のスパナはどこに行っちゃったの?
「心配ない、この時代のウチは10年後にいる。5分もすれば戻ってくるから」
「…よく私の考えてることわかりましたね」
「あんたとはずっと一緒にいるからなんとなくわかる」
「ずっと一緒?」
「ずっと一緒。ウチは今より成長したあんたを知ってるしそうなるまでの成長期間を一緒に過ごしてきた」
「10年後の私ってどうなってるの?」
「…秘密」
そう言ってスパナは少し笑った
あ、笑い方が今のスパナと一緒だ
「ん、もう時間だ」
「え!?」
「今のあんたも可愛いからキスしたいけど…今のあんたは10年前のウチのものだからやめとく」
「10年後は自分の目で確かめて」と言ってスパナは煙に包まれた
代わりに現れたのはさっきのスパナより少し幼い私のよく知るスパナ
「スパナ!」
スパナに抱き着いて思ったんだけど、何故かスパナにしては珍しく興奮していて体温が高かった
「聞いて!10年後の技術は凄い!10年後のウチはあの入江正一と仕事をしてた!」
「そ、そう。よかったね」
「あと裸のあんたが毛布に包まってた」
「なっ…!!」
何故!?何があったの10年後の私!!相手は誰!?スパナだよね!?間違ってないよね!?
「10年後のあんたはセクシーだった」
「…スパナもかっこよかったよ」
「10年後も一緒にいるんだな」
「そうね」
「大好きな機械に囲まれてることも嬉しかったけどあんたとウチが10年後も一緒にいるってことが一番嬉しかった」
「私もだよ…」
10年後のあのスパナを見るのはまだまだ先だけどこれから先成長していくスパナの隣には私がいるんだと思うと堪らなく嬉しかった
「私進路決めた」
「?」
「スパナのお嫁さんになる!」
「ん、いい進路だと思う」
「ふふふっ」
さっき会った10年後のスパナと私の薬指にシルバーリングが嵌められていたということを私もスパナも今はまだ知らない