「謙也ー蔵知らーん?」

「まだ部室におったで」

「おーありがとう」

「ほな俺らさき帰るわー」

「はーい、バイバーイ」

「おう、また明日なー」


本日の練習も終了。
既に学ランに着替えた謙也達と別れてあたしは部室に向かった。
蔵はあたしの彼氏や。
部室の扉を開けると、机に突っ伏した蔵が目に入った。


「蔵、何してんの?はよ帰ろう」

「……ん、」

「蔵?」


よく見ると蔵はペンを握ったまま寝ていた。
顔の下には部誌が敷かれている。

「疲れてるんやね…」

普段の蔵を思うと何だか起こすのも気が引けたのでとりあえずあたしは蔵の向かい側に座ることにした。
改めているとホンマに整った顔してるなぁ…
うわー睫毛ながー!鼻筋通ってるなぁ、ちゅうか色白っ!なんでテニスやっててこんな白いんよ。
あー髪も綺麗やしホンマにパーフェクトな人やなぁ

「そらモテるわなぁ…」

こんだけイケメンで優しくて面倒見もよかったらそらモテるわ。
ちょっとナルシなんと口癖はどうかと思うけどそれ以外は非の打ち所がない(と思う)
蔵はなんであたしと付き合ってるんやろ。
あたしの何が好きなんかな、自分でもわからんわ。
まぁあたしは自分を卑下したりはせんけど蔵のファンに何かとやいやい言われたら多少なりとも自信無くすっちゅーの、
蔵はあたしがよくて付き合ってんのやから蔵とあたしが釣り合うとか釣り合わんとかはどうでもええ。
好き勝手言いたいんやったら言うといたらええやん。あたしは蔵が好きで蔵はあたしが好きなんやから他人が何て言おうと関係ない。
それでもブス言われたり嫌がらせされたりしたら凹むっちゅーの
あたしはそこまで神経図太くできてへんわ。


「蔵、蔵帰ろ」

「ん、んぅ…」


外が若干暗くなりだしたので流石に起こすことにした。
蔵の肩を揺すっても蔵はむずがるだけで起きへん。
…漫画やドラマならここでキスしたりすんのがベタな展開、なんかな…
そんな乙女チックなこと今までやったことないわぁ。
えー…ベタにノってみようかなー
ちゅうか普通逆やない?お姫様に王子様がキスするもんやない?
なんやねんこの蔵雪姫(我ながら痛いわぁ…)なんで彼氏のあんたが寝てんのや。なんであたしが王子側やねん。

「(…さっさとやってまお)」

何故かあたしの中の男前魂が目を覚まし、何にも知らずに寝ている蔵にキスをすることにした。
別に寝てる蔵にキスをする必要は全くない。
頼むからベタな展開みたいに目ぇ覚ましたりせんといて。
覚まされたら恥ずかし過ぎて爆発してまうわ。


蔵は机に頬をつけているからやりにくかったけどなんとかキスすることができた。

「……起きへんやん、アホらし…」

キスをしても蔵は目を覚ますことがなくて、今更ながらアホなことした自分が恥ずかしくて仕方がない。


「アカン…顔熱い…」

「ホンマや、林檎みたいやな」

「!」


蔵から逸らしていた目を戻すと、蔵はいつの間にか起きていてニヤニヤしながらあたしを眺めていた。


「ちょっ…!いつから!?いつから起きてたん!?」

「何言うてんの、王子様がキスしてくれたから俺は目ぇ覚ましたんやで?それまで蔵雪姫は毒林檎食うたから寝てたんや」

「……もうええわ」


ニヤニヤ笑いながら言う蔵を見てたら自分でした行動が更にアホらしくなった。
ああぁぁぁあっ!!なんであんなアホなことしたんや自分ッ!


「今度するときは俺が王子様になったるから自分は寝ててな」

「嫌やわ、一緒起きといたる」

「別にそれでもええよ、勝手にキスしたるから」

「あっ!待っ、く…!」


不意打ちで蔵にキスをされたと思ったら蔵はなかなか唇を離さへん。


「っ…もうっ!長いわ!」

「なんでやの、愛しの王子様からのキスやんか」

「王子様はこんなエロいキスせぇへんもん!」

「白石王子はすんの」


どんな王子様やねん。エロい王子様とか嫌やわ!
けど耳元で「俺は自分だけの王子やで」とか甘く言われて腰が砕けそうになってるあたしの脳みそはエロい王子様でもそれが蔵なんやったらまぁええか、とか思ってしまった。あーアホらし、

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