パァアンッ−


一瞬何が起こったのかわからなかった


「トシッ…!」

「土方さん!」

「副長っ!」


私にはトシが倒れていくのがスローモーションのように見えた

…何が起こったの?
あぁそうだ、どこからか狙っていた攘夷組にトシが撃たれたんだ


「トシッ!…くそっ!山崎お前は救急車を呼べ!俺と総悟は犯人を追う!」


近藤さんと沖田くんは犯人を追いかけに行った
ここに残されたのは携帯で救急車を呼んでいる山崎くんと、道に倒れてお腹から血を流すトシと呆然と立ち尽くす私だけ


「ト、シ…?」

「ハァ、ハァ…ぐっ!」

「ねぇトシ…ヤダ、どうしよう…ねぇヤダ…トシ!」


なんでなんでなんでなんでなんで!!
私達はただ買い物をしてみんなで仲良く屯所に、私達の家に帰ろうとしていただけなのに…!!


「っあ、…ハァ、落ち、着け…」

「トシ、トシ…」


トシが手を伸ばしてきたから震える両手でその手を包んだ


「たぶん…ッハァ…ダメだ、」

「ヤダよ…何言ってるの?大丈夫だよ、ねぇトシ…」

「俺が…いなくなったら、ッ近藤さんを護るのは…ハァ、総悟だ…」

「何言ってるのよ!トシが近藤さんを護っていくんでしょ!?まだ沖田くんに副長の座を譲るのは早いよ…!!」

「総悟は…俺と、一緒で…ぐっ、ひ、一人で…抱え込んじまうクセが、ある…だから、あいつの異変にっあ、気づいたら…助けて、ハァッ、やってくれ…」

「ねぇトシ…トシ、何言ってるの…?ヤダよ…ねぇヤダよトシ…」


トシから流れる血は止まらない
ねぇトシ、涙でトシの顔が歪むの、トシの顔がよく見えないの
ねぇ、その親指で優しく拭ってくれないの?
いつも私が泣いたときしてくれるじゃない


「ご、めん…っ…ごめん、な…」

「トシ、トシ…もういいよ喋んないで、お願いだから喋らないで…死んじゃう…」

「幸せに…ハァ、幸せに、ッしてやれなくて…ごめんな」


トシ、なんで泣いてるの?
まだ間に合うよ
今からでも幸せにしてよ、ねぇまだ間に合うよ…


「ヤダ、ヤダ…逝かないで…!!逝かないで!一人にしないでよ…ッ!!」

「ハァ、あっぐ…ハァ……」

「ト、シ…?」


トシの荒かった息が弱ってきている
手も冷たくなってきた


「ごめん、な…」


私の両手からトシの右手が滑り落ちた


「…トシ?ねぇトシ?トシ?トシ起きて、ねぇ…起きて…起きてよっ!!」


どれだけ揺すってもトシの目は開かない


「いや、いやァァァアッ!!置いていかないで!!一人にしないでぇ!!お願いだから起きてよォ!!」


泣き喚く私の肩を誰かが掴んでトシの体から私を離した


「近、藤…さん…?」

「…もう…もうやめるんだ…」


涙目の近藤さんと周りには静かに涙を流す山崎くん、沖田くんはじっとトシを見つめている



トシが…死んだ…?



「い、あ…ァあ゙ぁぁあ゙アあぁあァアっ!!!」


貴女がいない世界に生きてる意味なんてない


戯曲は奈落の底に悲しみを謡う


ねぇ私も連れて逝ってよ


Thank you!
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テーマ「人外ファンタジー」
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