立入禁止


それがどうした


その扉の向こうには青々とした空が一面に広がっていて少しの白い雲が浮かんでいる
太陽は眩しいくらい照り付けていてその下のグランドではどこかのクラスが体育を受けている


扉の向こうには自由が待っている
誰にも邪魔されない自由





オレは三年の先輩から奪いあげた屋上の鍵を手に意気揚々と階段を駆け上がった




「あ、」



屋上に続く扉を開けて一番に目に飛び込んできたのはコンクリートに寝そべる女



「あはっ頭おかしい人だ」

「誰がだよ。お前のが頭おかしいだろ」

「自分のこと王子とか言って頭にティアラ乗せてるあんたのが頭おかしいよ」

「お前ってうざいよね」



オレは寝転ぶ女の横に座った
コイツは一応クラスメイトでオレの隣の席
なんでコイツがここにいるんだろう
ここの鍵はオレの少し汗ばんだ右手にしっかりと握られてるのに
入れるはずないのに
だいいち俺はここに入るために鍵穴に鍵を挿して、回して、ガチャンって鍵が開く音をしっかり聞いてから入った
ということは鍵かかってたんじゃん
でも既にコイツがいたし
意味わかんねー



「知ってる?ここ立入禁止なんだよ」

「知ってるよ貼紙してたじゃん。つーかお前どうやって入ったんだよ」

「ん?あぁ、鍵持ってるの三年のあの恐い先輩達でしょ?あたしあの人達嫌いなのよね我が物顔で廊下歩いっちゃってさ、何様のつもりよ」

「鍵ならのして奪った」

「あははははっ!あんた最高ー!」



女は目にうっすら涙を浮かべて可笑しそうに笑っている
何がそんなに面白いのやら
確かにあの先輩達を好いてる奴なんかいないけどさ、オレもアイツ等嫌いだし



「で?」

「ん?」

「だからどうやって入ったか訊いてんだよ」

「ここのドア壊れてるからしつこくドアノブがちゃがちゃやってたら開くんだよ」

「オレ入ったとき鍵かかってたんだけど」

「ドア閉めちゃうと鍵勝手にかかっちゃうんだよ」



なんだそれ
オレがアイツ等のして鍵奪ったのあんま意味ないじゃん
くっそ、あの無駄な時間返せよ



「ベル今日いつ来たの?」

「3時間目」

「1時間前ですか。あたしなんか毎日ちゃんと朝から来てんのに」

「しししっそれが普通じゃん」

「しししっ」

「真似すんな馬鹿」

「はいはい、あー今うちのクラス数学だっけ?」

「知んねっ」

「数学だよ。数学嫌だからあたしここでサボってんだもん」

「知ってんなら訊くなようぜー」

「うぜーって言うなうぜー次お昼だね」

「弁当忘れたからお前のよこせよ」

「ヤダよせっかく早起きして作ったのに」

「え、お前弁当作れるの?毒物?」

「失礼な!これでも毎日作ってますけどー!」



へー意外お前ぶっちゃけ料理とか出来なさそうなのに
裁縫とかも出来んのかな
指とか針でぶっ刺しそうー
しししっオレ結構家庭的な女好きだよ



「あ、パンツ見えた」

「見んな馬鹿」

「黒とかセクシー!」

「ちょ、忘れて」

「無理。スカートで寝転んでるお前が悪い」

「あたしが寝転んでるのに座ってるベルが悪い」

「何その意味不明な理由」



あーあちぃー汗ヤバいんだけど
シャワー浴びてぇなー
帰ろうかなさっき来たばっかだけど
あ。コイツも汗掻いてる



「…っやあ!」

「しししっ声えっろー!」

「ちょっと…!!アホ!お前何してんの!馬鹿!」

「顔真っ赤じゃん」



ふと見たコイツの首筋に汗が流れてキラキラしていて酷くエロいように感じた
つぅっと人差し指で首筋を撫でると予想以上にエロい声を出された
やっべーオレ結構コイツのこういう声好きかも
真っ赤になっちゃってかんわいー



「もう!次首触ったら許さないから!」

「首弱いんだ」

「うっさい馬鹿!」

「お前さっきから王子に向かってバカバカ言い過ぎ」

「エロベル」

「健全な男子は15分に一回エロいこと考えるらしいよ」

「うっわ!引くー」

「素直な反応だな。なぁ、」

「何?」

「お前好きな奴いる?」

「なに当然」

「いいから」

「えーいないよー」

「マジで?」

「マジで」

「彼氏作んねぇの?」

「なんで好きな人いないのに彼氏作んの?」

「あ?あぁ、まぁそうだな」

「あたしベルみたいに好きでもない人と付き合ったり出来ない」



ということはコイツと付き合うためにはオレを好きにさせなきゃなんねぇわけだ
あれ?オレ付き合いたいの?コイツと?
あれ?オレもしかしてコイツのこと好きなの?



「おー!スク先輩はやーい!」

「はぁ?」

「ほら見て!体育やってんのスク先輩のクラスだよ!」

「どれ」

「ほら、あれ!あの右側走ってるの」



二人で一緒に金網に寄り掛かってグランドを見てみるとスクアーロが全力疾走していた



「コケろ」

「あははっ!酷ッ!」



あれ?あれ?コイツこんなに横顔綺麗だったっけ?
こんなに笑った顔可愛かったっけ?



「スク先輩頑張ってー!」

「(………。)あんなカス鮫より王子のが早いし」

「えーあたしベルが走ってるとこ見たことないしわかんない」

「ん、じゃあ今度見せてやるよ」

「あはは!何それ!別にいいよベル走ってるとこ見てもしょうがないし」

「じゃあ鮫と競争する」

「スク先輩が勝つに500円」

「安ッ!」

「今金欠なの!…あ、チャイム鳴った」

「次なんだっけ」

「お昼だってさっき言ったじゃん」

「そうだっけ?」

「え、なに?アルツハイマー?」

「ここから突き落としてほしいわけ?」

「ジョーダン、ほら教室戻ろう」



そう言ってドアを開いてこっちを向いて笑ったコイツに胸が高鳴ったなんてそんな馬鹿な



は突然やってくる


090727

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テーマ「人外ファンタジー」
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