「ベル、」

「あ?なに?」



ソファーの上に寝そべりながら雑誌を読んでいるとジルに話かけられた



「お前はオレであってオレじゃない」

「は?」



なんだこいつ。頭湧いたのか?
オレはオレであってジルじゃない
オレであってオレじゃない?
意味がわからない
確かにオレらは双子だけど似てるとこなんてなんもねぇじゃん
例えばオレが腹を空かしていたとしてジルがオレの代わりに飯食ったとしてもオレの腹はまったく満たされねぇんだよ
ジルが死んだらオレが死ぬわけでもねーしオレとお前は何にも繋がっちゃいねぇ
悔しいが頭だって運動神経だってジルの方が上だ
オレらが似てるとこなんてない
外見だって他人から見たら似てるように見えるだけであって身内からすれば全然違う顔に見える
中身なんてまったく似てねぇし
あぁ、そういや笑い方は一緒だったな



「お前さ、何が言いわけ?オレはオレだよ。お前じゃない」

「オレはお前になりたいんだよ」

「は?いつもオレのこと準天才とか馬鹿にしてんじゃん」

「もう準天才でもなんでもいいんだよ」



そう言ってジルは突っ立ったまま自分の足元を見た
何こいつ気持ち悪いんだけど
いつもえばってて偉そうなくせにどうしちゃったわけ。



「ジルどっかで頭ぶつけた?」

「オレはお前の片割れで血だって一緒なのに…」

「なぁ、頭イカレたの?」

「アイツはお前が好きでオレが好きじゃないんだって」

「誰アイツって」

「見た目だって他人から見たら一緒に見えるはずなのにアイツには違って見えるんだって」

「おい、人の話聞いてんのかよ」



アイツって誰だよ
アイツなんて名前オレの知り合いにはいねぇよ
もしジルの言ってるアイツと直感でオレの頭を過ぎったアイツが同じ奴ならオレは最高に幸せだよ



うししっこいつ失恋したんだダッセー
アイツがオレを好きでジルを好きじゃないからお前はオレになりたいんだろ?
アイツは外見より中身を選ぶような奴だから例え外見が一緒だったとしても意味ねぇよ
まぁオレらと長い付き合いのアイツがオレとジルを見間違ったりはしないんだろうけどな。


アイツはアイツであってオレじゃない
オレはオレであってジルじゃない
ジルはジルでオレでもアイツでもない
みんな違うから誰かに惹かれるんだよ
ジルとオレが外見も中身も癖も何もかも同じだったらアイツはオレもジルも好きになってないと思うぜ?
オレもジルもアイツも何もかも違うから惹かれあってんだろ
まぁジルはフラれたけどな。
しししっ超ケッサク



「ベル、」



あぁ噂のアイツのお出ましだ



「なに?」

「あのね、話があるんだけど…来てくれない?」



チラッとまだ突っ立ったままのジルを見ると苦虫を噛み潰したような顔をしていた



「いいぜ別に」

「ほ、ほんと!?」

「あぁ、ほら向こうの部屋行こうぜ」

「うん!」



彼女の元へ駆け寄り部屋のドアを閉めた
泣きそうな顔して立ったままのジルの横を過ぎ去る時、アイツに見えないように、ジルに向けて嫌らしくニヤッと笑ってやった



次にジルの前にオレらが戻って来たときは二人仲良く手とか繋いじゃってるかもね。ジルの奴ぶっさいくな顔して泣き喚かねぇかなーしししっ



end



双子なのに好きな子が自分じゃなく自分より劣ってるベルを好きなことに嫉妬するジル
血とか作りは同じなのに何故自分じゃなくベルを好きなのかわからないと思ってるジルを馬鹿だと思うベル


この後ベルと両想いなことを知ってヒロインは喜ぶんだよ
そんで二人が手ぇ繋いでるとこ見ちゃってジルは部屋で一人静かに泣くんだよ(^ω^)
ジルは泣くし両想いだしでベルはウハウハ(笑)

ただジルの方が俺様要素強くて人の気持ちとかに疎そうだと云う話を書きたかっただけ←



090630

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テーマ「人外ファンタジー」
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