空には満天の星屑
月明かりだけが私を照らす暗い部屋で私は誰に聞かせるでもなくぼそっと呟いた
「死にたい…」
死にたい、辛い、生きてる意味がわからない
しんどい、怠い、何が?そんなの私にもわからない
「アッハッハッ!ただいま〜!今帰ったぜよー」
この部屋の空気と合わない能天気な声が響いて私の鼓膜にもそれは届いた
「おろ?電気も付けずにどうしたんじゃ?」
「…たつ、ま……」
ゆっくりと振り向いた私を見て辰馬は驚いた顔をした
「おんしゃ泣いちゅうがか?」
「…っひ、う…ぁ、」
「どうしたんじゃ?なんぞあったがか?」
辰馬は私に近寄ってくると私を抱きしめて子供にするように背中を一定のリズムでポンポンと叩いた
「…あっ、く…ッ」
「ん、辛いなら泣け」
「…っ!!あ゙ぁぁあ゙あぁあっ!!!!」
絶叫して泣き叫ぶ私を辰馬は突き放すわけでもなくずっと背中をポンポンと叩いている
もう何が何だかわからない
頭も心もモヤモヤする
私に残っているのは喪失感と焦燥感と不安だけ
私は辰馬を突き飛ばして離れるとそこら辺にあった物を泣きながら投げつけた
「ッく…あんたのそういうとこがうざい…!!うっ…いつも能天気に、笑ってるとこも!人の話聞かな…いところもっ!!」
ごめん、ごめんごめんごめんごめんごめん
本当はそんなこと思ってない
本当はこんなことしたいわけじゃない
「…っ!!」
私の投げた置物の角が辰馬の額の端に当たって血が流れた
それでも辰馬は私に近寄ってきて左手で自分の頭を抑えながら右手で私の片方の手首を掴んだ
「…ッ落ち着け!!」
「…やッ!!触んな!離して!!」
「落ち着くんじゃ!」
嫌、嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ…!!
何もかも嫌だ!もう嫌だ
今私が着てるこの紅い着物も辰馬に買ってもらってお気に入りだったけど今ではうっとうしい以外の何物でもない
投げるのを止めてヘタリこんでまだ泣く私の前に辰馬も手首を掴んだまましゃがみ込んだ
「…辛い、辛いよ…辰馬…死にたいよ…辰馬、」
「…わしは、何も、してやれん」
「辰馬、辰馬…」
「ん?」
「…お願い、殺して」
愛しい貴方に手をかけられるのなら死して漸く幸せな世界に逝けるでしょう
貴方に殺されるのなら痛みすら感じないと私は思うのです
「……できん」
「どうして?」
辰馬は何も言わずに苦虫を噛み潰したような顔をすると手首を引っ張って私を抱き寄せた
「…生きて、お願いやき生きて…ッ!!」
「辰馬…」
肩が濡れていくのがわかった
骨が痛いくらい強く抱きしめられている
神様は残酷だ
こんな汚い世界を作ったくせに
時々お遊びで玩具(人間)に優しくするんだ
神様は残酷なくせに優しい
私と辰馬を出逢わせて愛し合わせたのは神様の優しさ?
でも愛しいこの人がいなければ私は死を思い止まることなんてなかったのに、思い残すことなく死ねたのに
やっぱり神様は残酷ね
「…死ぬな!生きろ…ッ!!」
残酷な世界でただ星だけが綺麗だった
鬱な彼女とそれに立ち向かう辰馬
091213