苗字名前
彼女はよくテニス部の練習を見に来る
俺がボールを追いかけているときは話しかけないが俺が若干暇な時に話しかけにくるのでついつい俺も相手をしてしまう。
そんな彼女は俺のクラスメイト
今日は男女合同で持久走テスト
トラックを10周するのだ
男子は既に走り終えたので女子が走っているのを見学するしかない
持久走などテニス部の俺には簡単なことだが…苗字は大丈夫だろうか
以前、美術部である彼女は体力も持久力もないと言っていた
少し心配になってスタートラインにいる苗字に目線を移すと目があった
苗字は俺に気付くとにこっと笑って軽く手を振ってきた
俺は手を振るのが何故か少し照れ臭かったのでどうしようかと内心慌てていると、彼女はそれを察したのかもう一度だけ笑って前を向いた
その笑顔に少しドキッとしたとき、パーンッと先生が持つピストルが鳴って彼女達は走り出した
そういえば最近苗字とよく目線が合う気がする
廊下を歩いていて苗字を見かけたと思ったら彼女も俺に気づいて目が合ったり、授業中なんかも目が合ったりする
俺の気のせいではない、はず…
しかし俺だけがそう感じていたのなら恥ずかしい限りだ
「手塚くん!」
「…苗字」
少し汗をかいた苗字が息を弾ませながら俺の元にやってきた
「終わったのか?」
「うんっ頑張った!」
「そうか」
苗字を見ていると何故か頭を撫でてやりたくなる
小さい子と接しているような…
小動物と接しているような…
「手塚くんが走ってるの見てたけどやっぱり早いね」
「苗字も持久走は苦手だと言っていたわりにはなかなか早かったぞ」
「ホントー?手塚くんに褒めてもらうとなんか嬉しいなぁ…あっ!そうそう、手塚くん」
「何だ」
「さっき手ぇ振るの恥ずかしかったんでしょ!」
やっぱり彼女は分かっていたらしい
「ふふふ、最近何かよく目ぇ合うよね」
「…………。」
「手塚くん?」
「あぁ、お前もそう思うか?」
「え?違う?合ってない?」
「いや、合っている。さっき俺も同じことを考えていたから驚いただけだ」
「なんだーよかったー、私だけが合ってるのかと思ったよーなんか最近気がつくと手塚くんのこと見ちゃってるんだよね」
「そ、そうか…」
俺も"気がつくお前のことを目で追ってしまっている"と言ったら彼女は引くだろうか
よく君と目が合う気がします