教授と博士時代から俺と貞治の共通の友人である名前
タイミング良く休みが重なった俺達はその彼女に呼ばれ、彼女の行きつけだというカフェに集められた


今日は雨だ、梅雨入りはまだとは言え雨は色々と面倒臭いと思うのは俺だけだろうか
明るい室内とは違い外は薄暗く、降った雨が窓ガラスを伝ってゆるく流れている



「髪広がるから雨ヤダー…早く止まないかなぁ」

「少なくとも夕方までは止まないだろうな」

「なんで?」

「今日の降水確率は80%だからだ」

「マジで?」

「ちょっと待て蓮二、俺が見た天気予報だと70%だったぞ」

「えー別に何%でもいいよー80%だろうと70%だろうと雨には変わりないんだし」

「いや、確率は大事だぞ」

「そうだぞ苗字」

「えー…」

「なんだその不服そうな顔は」

「言いたいことがあるならハッキリ言え」


名前は頼んだアイスティーをストローで掻き混ぜて茶色い液体の中でクルクルと回る氷を目で追っている
俺と貞治はそんな名前を少し温くなったホットコーヒーを飲みながら眺めていた



「ねぇ、データってそんなに大事?」

「当たり前だ。データは嘘をつかない」

「事前の下調べが結果に繋がるんだ」

「私にはわかんないなー」

「名前は日常生活でデータを必要としたことがないのか?」

「日常生活で?」

「例えば好きな人、或は友人の誕生日などを調べたりだな…」

「蓮二も貞治もキモい!ストーカーっぽいって言うか変態っぽいって言うか…とにかく気持ち悪い!」

「なっ…!!」

「……心外だな」

「好きな人の誕生日とか癖とか趣味とか全部色々初めから知ってて楽しい?好きな人と会話したりしながらその人の知らなかったこととかを知っていくのが楽しいし嬉しいんじゃん!」

「それなら俺達はデータに無かった情報を新たに得る方が楽しいと思うぞ」

「わかんないなー貞治なんか自分の知らなかった情報を見せつけられるとショートするくせに」


苗字はそう言って氷が溶けてグラスに汗をかいたアイスティーを飲んだ
そもそも俺達は何故ここに集められたんだ。苗字の目的はいったい何なんだ
俺と苗字は同じ学校だから俺と蓮二で別々な用件なら俺には学校で用件を伝えればいい
だが二人同時に集められたと言うことは二人じゃないとダメだと言うことなんだろうか



「ねぇねぇ、聞いたこと無かったけど私のデータとかもあるの?」

「当たり前だ」

「知りたいかい?」

「あはは、遠慮しときま〜す…」

「とこで名前」

「ん?」

「何故俺と貞治はここに集められたんだ」


蓮二も俺と同じく用件は聞かされていなかったらしい
用件を聞いてから呼び出しに応じるんだったと今更ながら思った



「あら、あなた達のようなスーパーデータマンDXならお見通しなんじゃなくって?」

「なんだその頭の悪そうなネーミングは」

「残念ながら俺のデータを持ってしてもさっぱりわからない」

「んふふっ!」


苗字は謎の含み笑いをすると自分の鞄を漁って中から二つ、ラッピングされた小さい袋を取り出した


「蓮二は緑の袋で貞治は青の袋ね」

「なんだ?コレは」


「開ければわかるよ」


俺も貞治もその場でリボンを解いた
俺の袋から出てきたのは白に黒のラインが入ったリストバンドだった
貞治のは俺と同じ種類で黒に白のラインが入った色違いのリストバンドだ



「苗字、これはなんだ?」

「リストバンド」

「そういうことを訊いてるんじゃない」

「怒んないでよ蓮二ー」

「怒ってるんじゃない。訊いているんだ」

「それは私から二人への誕生日プレゼント!」

「俺と蓮二への誕生日プレゼント?」

「うん、蓮二のとこはリストバンドまで統一されてるみたいだから付けれるときはないかなーとも思ったんだけど」

「あぁ、まぁそうだな」

「ねぇ、ちょっとそれひっくり返して中見てみて」

「中?」


言われた通りに俺も蓮二もリストバンドの裏表を反対にすると裏側に教授、博士、助手とプリントされていた
因みに助手とは苗字の昔の呼び名だ



「それ私がパソコンでやったんだよ!凄くない?」

「これはいったい…」

「友情の証!ずっと友達でいれますようにって」


昔とまったく変わらない笑顔で名前はそう言った


「私達ずっと友達でいようね」

「あぁ、そうだな…ありがとう名前」

「友情の証か」

「それにしても誕生日プレゼントがリストバンドとは色気がないな」

「実用的だし別にいいじゃん!」

「昔からそうだったが苗字のすることは今になっても俺も蓮二も予想が出来ないな」

「ふふっ、データが全てじゃないんだよ」

「…そうかも知れないな」

「あ、外見て!雨止んでるよ!」


窓の向こうを見るとさっきまで降っていた雨は止んでいた
俺達は会計を済まして外に出た
道には水溜まりがいくつもあり、曇り空の中から所々に降り注いでいる光が射していた



「80%敗れたり〜!夕方までに雨止んだしー」

「だがそれも予想の範囲内だったことだ」

「うわー蓮二ムカつくー」

「苗字、前を見て歩かないと水溜まりに嵌まるぞ」


光を受けた雫が反射して普段はなんとも思わないが何故かこの時はキラキラしていて綺麗だと思った


「そうだ、新しい乾汁が完成したんだ。今から家に来て試しに飲んでみないか?」

「全力で拒否しまーす」

「悪いな貞治。俺もお前の作る得体の知れない液体を飲むのだけは流石に勘弁してもらいたい」


この日は何もかもが予想外の日だったが、俺達にとってはとても純粋で全てがキラキラしていた素晴らしい日だった。

Happy Birthday 乾&柳!!
100603.04

第3回BLove小説・漫画コンテスト結果発表!
テーマ「人外ファンタジー」
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