「今日は観月くんのお誕生日ですね!」

「そうですね」

「嫌われ者の観月くんを祝ってくれる人は少ないと思うので私が全力でお祝いしたいと思います!」

「土下座しますから死んで下さい」


ハッピーバースデーですよ観月くん!死んだらお祝い出来ないよ!
淳に「今日観月の誕生日だね!」って言ったらいつものくすくす笑いじゃなくて鼻で笑われました!酷いぜ淳!


「とりあえず裕太くんと淳と柳沢とバカざ…赤澤が観月にプレゼント渡しといてって私にプレゼントを押し付けてきました!」

「今あなたバカ澤って言いかけましたよね?」

「言うわけないでしょ!赤澤は尊敬出来る立派な部長だよ!?バカ澤なんて言っちゃいけません!」

「ボクは言ってません。あなたが言ったんでしょう」

「はいはい、まずは淳からのプレゼントね」

「無視ですか」


もうっ!観月はいちいち煩いんだよこの女男!っと言う暴言は喉の奥に飲み込んで観月に淳からのプレゼントを差し出した


「落花生、ですか…」

「千葉の名産品だね!」

「誕生日に落花生を貰っても反応に困ります」

「わーい!落花生だー!って言えばいいじゃん」

「頭カチ割りますよ」

「観月の?」

「あなたの頭ですよっ!!」


何でカリカリプリプリしてんの?落花生おいしいじゃん!
千葉の落花生ってめっちゃ美味しいらしいけど食べたことないから後で観月に貰おっ


「次は柳沢からです!」

「ア、アヒル…!」

「お風呂に浮かべて一緒に遊ぼうだって」

「あいつはまたっ!」

「観月なんかとお風呂でアヒル遊びして楽しいかな?」

「んふっ、彼には一度徹底的に入浴時のマナーを教え込まなければなりませんね…」


み、観月から黒いオーラがっ…!!
逃げて柳沢!湯の中に沈められちゃうよ!二度とアヒルと?アヒルで?遊べなくなっちゃうよ!


「あ、これは赤澤からのプレゼント。カレー風味の入浴剤」

「カレー風味!?」

「"甘口、辛口、大辛、シチューの四種類があります。お風呂でカレー、シチューに入った気分になれます。"だって」

「いりません」

「えー!珍しいんだから試してみればいいじゃん!」

「嫌ですよ!薔薇なら考えましたけどカレー風味はボクの趣向に反します!」

「もうーっ!屁理屈ばっかり!」


好き嫌いせずに入ってみたらいいのに
カレー風味の入浴剤があるなんて初めて知ったよ!よく見つけたな赤澤!


「はいっ次は裕太くーん」

「ケーキ?」

「一生懸命自分で作ったみたいだよ。私に作り方訊いてきたの」

「へーあの裕太くんが…」

「紅茶煎れてくるねー」

「ボクが煎れましょうか?」

「今日は観月は何にもしなくていいの!しちゃダメなの!」

「はいはい、わかりましたよ」


観月と一緒にいるうちに紅茶の煎れ方が上手くなった
んふふっ!観月も初めは文句ばっかり言ってたけど最近は褒めてくれるし煎れがいがあるなー


「アッサムですか?」

「うん。ミルクティーかダージリンでもよかったんだけど」

「チーズケーキなら一般的にレモンティーかアップルティーですが裕太くんが作ってくれたのはショートケーキですからね」

「まぁケーキ食べるときはコーヒーを飲む人の方が多いんじゃない?」

「そうでしょうか?」

「さぁ?美味しかったらなんでもいいよ」

「まったく、あなたという人は…」

「観月が紅茶好きだから紅茶にしたの!」

「んふっあなたも随分と紅茶の煎れ方が上手くなりましたね」

「ふふふ、よかった」

「ではいただきましょうか」


裕太くんが作ってくれたケーキをフォークで一切れ切って口に運んだ
裕太くんもなんだかんだ言いつつ……


「「…甘ッ!!」」


観月も私も下品にも紅茶をがぶ飲みした
甘い!甘過ぎるよ裕太くん!
君が甘党なのは知ってるけどこれはない!


「"甘い方が美味いので甘さたっぷりにしときました!"と、このメッセージカードには書かれていますよ」

「あれ程レシピ通りに作りなさいって言ったのに…」

「監督不行き届きでしたね」

「不二兄弟は加減を知らないなぁ…」


兄は激辛党だし弟は激甘党だし…お姉さんくらいは普通の味覚なのかな


「そういえば青学の不二くんからサボテンが贈られてきました」

「へーあの観月嫌いの不二くんが」

「…なんか棘が物凄いやつでした」

「あはは、相変わらず嫌われてるねー」

「ふんっ」

「まぁ仕方ないよ、裕太くんに無理させたんだし」

「ルドルフの勝利のためです。仕方ないことでしょう」

「私観月のそういうところ嫌い」

「うっ…」


観月は少し罰の悪そうな顔をした
勝ちたいのは当たり前だしシナリオにこだわる観月がそれ通りに事を進めたい気持ちもわからなくもない
けどそのために未来あるテニスプレイヤーの肩を潰していいわけにはならない


「あなたにそう言われてしまうとボクは何も言えなくなってしまう」


観月は私の正面から移動して横に座るとぎゅっと手を握ってきた


「ところであなたはボクの誕生日を祝ってくれないのですか?」

「祝って欲しい?」

「えぇ、出来れば」

「じゃあ目を閉じて」


観月にしては大人しく言うことを聞いて目を閉じた
色白だし綺麗な顔してるなぁ
この性格じゃなきゃモテただろうに
裕太くん特製激甘ケーキのクリームを指先で掬って観月の薄く綺麗な唇にそのまま押し当てた


「ふふっ、観月のシナリオなら今頃私から観月にキスしてたんじゃない?」


観月に向かって意地悪く笑ってやると、唇に押し当てたままだった生クリームのついた指を丹念に舐められた
背中がゾワゾワと粟立つ


「んふっ、あなたのシナリオならボクは今頃悔しがっていたんじゃないですか?」

「指舐めるとか誰が予想するの…」

「んふふっ、では改めてキスでもしましょうか」


本当にこの男は自分の思い通りに事を運びたがるから嫌になる
けどそんな観月も嫌いじゃない私は観月のシナリオ通りに動かされてる駒でしかないのかな


「愛していますよ」

「ふふふ、誕生日おめでとう。はじめ」


少し顔を赤くして微笑んだ観月が愛おしいと思った5月27日のティータイム


Happy Birthday 観月!
100527