「ざあいぜん、」 「何っすか…」 今日の練習が終わり、部室で着替えているとマネの名前先輩がニヤニヤしながら俺を後ろから眺めていた。 「今日一緒に帰らん?」 「は?」 「財前のこと家まで送ってあげるからさー」 「…何言うてはるんすか」 相も変わらず先輩はニヤニヤしている。 この人は何がしたいんや。 俺と先輩は一緒に帰ったことなんかないし家かて反対や。 「ちょっと君に用事があるのだよ」 「用事?」 「用事、だあいじな用事」 俺はロッカーの扉を閉めて鞄を肩にかけた。 「別にええっすよ」 「ほんま!?ほんならはよ帰ろ!」 先輩は俺から了承を得るとぱあっと顔を明るくした。 「蔵ー!うちら先帰るなー」 「お疲れ様でした」 「え!?何、二人で帰んの!?俺も一緒に…」 「バイバーイ、また明日なぁ」 なんか言うとる部長を無視して二人で部室から出た。 名前先輩の鞄を持ってやろうかと思ったけどなんでか鞄をえらい大事そうに抱えていたので「鞄、持ちましょか」って言うタイミングを逃してしまった。 「…送ってきます」 「え?あたしが送ってあげるよ」 「何アホなこと言うてるんですか」 校門から外に出て、先輩の家がある方向に歩き出した。 「財前さー」 「何っすか」 「今日誕生日なんやって?」 先輩は足元に転がっていた石ころをこつんっと足のつま先で蹴った。 「えぇ、まぁ…」 「そうかー財前くんも年取ったんやぁ」 「変な言い方せんとって下さい」 「んふふ」 先輩が蹴った石が俺の足元に転がってきたので俺も同じ様に蹴飛ばすと、石は道の端にあったドブへ落ちてしまった。 「みんな祝ってくれた?」 「まぁレギュラーのみんなからは」 「謙也とか蔵とかめっちゃ祝ってくれたやろ」 「なんか部室入ってすぐにクラッカー鳴らされました」 「んははっ、それめっちゃ迷惑ー」 「ほんまですよ」 先輩は足を止めて自分の鞄から小さい包装された袋を取り出した。 「誕生日おめでとう。これ、どうぞ」 「はい?」 先輩はその袋を俺に笑顔で差し出した。 「財前にあげる」 「何ですか?」 「誕生日プレゼント」 俺は先輩から袋を受け取った。 包装をビリビリに破いたら流石に悪いと思い出来るだけ丁寧に開けた。 「ピアス…」 「うん。ピアスやよ」 「なんでピンクのピアスなんですか」 先輩が俺にくれたのはピンクのピアスやった。 ピアス自体は有り難い。 せやけど男の俺がピンクのピアスはないやろ… 「それはね、うちの色」 「は?」 「財前五色ピアスやん?」 「まぁ、そうっすね」 「せやなからな、今からあたしが言うことが財前にとって了承出来る話やったらそのうちの一つをピンクに変えてほしいんや」 先輩は服の袖を掴んでもじもじしとる。先輩ん家は目と鼻の先や。 「あんな、」 「はい」 「あたし財前のこと好きやねん」 「は、…」 びっくりして言葉に詰まった。 いつからや、いつからこの人は俺のこと好きやったんな 「財前がな、うちと付き合えるようやったらピアス、変えてきてほしい」 「先輩……」 「じゃあ送ってくれてありがとう、帰り気ぃつけてな!」 「あ!先輩っ!」 名前先輩は俺の返事も聞かん間に家に向かって走って行った。 「ほんまにあの人は……」 手の中にあるピンクのピアスを夕日に照らすとキラリと光った。 「明日にならんでも今すぐ嵌めたったのに」 俺は耳からピアスを一つ外してピンクのピアスに付け替えた。 明日先輩に見せやなな。 あと言えやんかった「好きです」も言わなアカンな。 明日が楽しみな俺は人知れず小さく笑った。 END 財前くん誕生日おめでとう! 駄作過ぎてごめん。 100719 |