「名前ちゃん」

「妙ちゃん!来てくれたの!?」

「当たり前よ!大切な友達の結婚式だもの」



小さな控室に小さな彼女が一人
彼女は白無垢ではなくウェディングドレスを着ていた



「白無垢じゃないのね」

「本当はどっちも着るはずだったんだけど11月って何故か結婚式する人多いから時間とかの関係で…それに土方さんは暇な人じゃないしね」

「貴女の旦那様が名前ちゃんはドレスの方がいいって言ったんじゃない?」

「え、」



私がクスクスと笑いながらからかう様に言うと、名前ちゃんは頬をピンク色に可愛らしく染めた



「あら?当たり?」

「…当たりだけど…だ、旦那様…」

「あぁ、そっちね」



旦那様なんて言葉に照れる彼女は本当に可愛らしい



「名前ちゃん」

「なあに、妙ちゃん」



私は彼女の「なあに」と言う訊き方が好きだ
決してぶりっ子なんかじゃなく、優しく柔らかく問うその言い方が好きだ



「名前ちゃん、沖田さんに泣かされたら私にすぐ言うのよ」

「うん!ありがとう妙ちゃん」



名前ちゃんは優しく恥ずかしそうな笑った
あぁ、やだ
まだ式が始まってもいないのに泣いちゃいそう





「土方さんまだですかィ」

「まだだ」

「まぁまぁ総悟落ち着け」

「落ち着いてまさァ」



そう言う総悟は落ち着いてなんかなく、狭い控室の中で右に左に行ったり来たりを繰り返している



「総悟がタキシードってことは名前ちゃんはドレスだろう?白無垢は着ないのか?」

「…名前はドレスの方が似合ってまさァ」



ボソボソと話す総悟は珍しく照れていた
いつの間にこんなに大きくなったのだろう
道場に来た頃は俺の腰あたりだったのに随分と大きくなったものだ


総悟は両親も居ないしたった一人の肉親、大好きだったミツバ殿も亡くなった
だからと言うわけじゃないが名前ちゃんが居てくれて本当によかったと俺は思う
総悟のはきっとミツバ殿を除けば半分以上名前ちゃんにれて支えられているんだろう


なぁ総悟少しでいいんだ
ほんの少しでいいからお前が真選組を愛してくれたらいい
残りは全身全霊で名前ちゃんを愛してやってくれ
それでお前は両親の分もミツバ殿の分も幸せになれ



「近藤さん」

「なんだ?」

「土方さんと名前の話してたら早く名前に会たくなっちまいやした」



総悟は照れ臭そうに笑った
あぁ、お前ってこんなに可愛かったっけ
トシっていつもそんなに優しい目でお前のこと見てたっけ
嬉しそうな総悟を見ていたら俺もトシも自然と笑みが零れた


父親として、兄として、上司として、仲間として
今お前が幸せなことが心から嬉しいよ総悟




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テーマ「人外ファンタジー」
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