「ん、」



寒くて横にいる名前に抱き付こうとしたらそのまま俺の腕は温もりを感じることなく布団の上に落とされた



「…名前?」



何回探っても温もりは無くて俺はやっと起き上がって目を開けた
一緒に寝ていたはずの名前のスペースは既にもぬけの殻で布団は冷たくなっていた










「いただきまーす」


今日の朝は味噌汁、ご飯、焼き魚、酢の物、卵焼き、お茶
どれも女中が隊士の健康を気遣って作ってくれた栄養バランスばっちりの朝食(もちろん昼も夜も栄養ばっちりなのだ)


俺は卵焼きを一つ摘んで口の中に放り込んだ
あー今日は密偵の仕事があるから夜は魚肉ソーセージだな


俺がもぐもぐと食事をしていると誰かがバタバタと凄い音を出しながら廊下を走り、食堂に向かって来るのがわかった


副長はここでマヨネーズ塗れの朝食食べてるし、普通なら隊士全員起きてるけど沖田さんがこんな時間に起きてるわけないし…そうなると局長?



「名前ッ!!」



意外や意外、食堂に現れたのは沖田さんだった
食堂にいた隊士全員が口を開けた
それもそのはず沖田さんは今まで一度もこんな時間に起きたことなどない



「た、隊長…その格好…」



沖田さんは隊服ではなくまだ寝巻きのままだった
それにもう12月だと言うのに靴下も穿かずに裸足だった
髪なんかぐちゃぐちゃ
まぁ要するにたった今起きました!みたいな格好


沖田さんはさっきの隊士の言葉を無視し、慌てた様子で食堂をキョロキョロと見回した後たまたま目があった俺の方へ近寄って来て俺の胸倉を掴んだ



「山崎!名前知りやせんか!?」

「おぶっ…!ちょ、揺すらな…も、ちょ、吐く!吐く!」



胸倉を掴まれた俺はガクガクと体を揺すられ胃の中がシェイクされてリバースしちまいそうになった



「えほっ…名前ちゃんなら…」

「あぁん!?知ってるならさっさと言いなせェ!」

「ちょっと待…」

「山崎くんお茶のおかわり…」



沖田さんと俺の間に呑気に割って入ってきた声はまさしく隊長が探していた名前ちゃんのものだ
本人はキョトンとした顔で手には急須を持っている



「総悟おは…」

「名前!」



沖田さんは(いつもだけど)人目を気にせずに名前ちゃんに抱き着いた



「どうしたの?総悟」

「朝起きたら居ねぇんで心配しやした…!!」



ぎゅうっと名前ちゃんを抱きしめる沖田さんは何だか幼くて名前ちゃんの旦那さんには見えない



「ごめんね総悟、朝ごはん作ってたの…私も女中だからちゃんとお仕事しなきゃ!」

「ん、わかってまさァこれからは俺も一緒に起きやす。朝隣に居ないと寂しいんでさァ」



甘ぁぁぁあい!!!(古ぅぅぅうい!!!)
ぐりぐりと頭を押し付けて甘える沖田さん
寂しいって何!?あなたそんなキャラじゃないでしょ!?
まぁ今に始まったことじゃないけど!二人が付き合い出したころからこんな感じだけど!



「とりあえず着替えて着たら?」

「ん、名前も行きやしょう」

「ダメよ仕事があるもん。あ、山崎くんお茶のおかわりいる?」

「え、あ、うん」

「ねぇ名前行きやしょうーちょっとくらい抜けても大丈夫でさァ」

「でも…」

「大丈夫よ!新婚なんだし、ちょっとくらい抜けても平気よ!」



そう言ったのは名前ちゃんの先輩のオバサン女中で、それを聞いた沖田さんはぱあっと顔を明るくさせた



「おばちゃんサンキュー!名前行くぜ!」



沖田さんは名前ちゃんの手を握り意気揚々と駆けて行った



「若いっていいわね〜」

「は、ははは…」

「山崎さんお茶のおかわりは?」

「あ、い、いただきます…」



通行人Iの密やかな嘆き


もう少し人目を気にしてくれ!

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