「ありがとうございました!」

『ありがとうございましたー!!』


とうとう来てしまったサヨナラの日
金高の奴らは俺らに頭を下げている


「っし!終わり!名前ー帰んぞー」

「あ、ちょっと待って!…坂田くん!」

「え?」


苗字さんは土方の隣を離れ俺の元に駆け寄って来た
高杉達は気を効かせたのか黙って体育館から出て行った


「あのね、」

「おう」

「はいっこれ!」


苗字さんはポケットから小さな白い袋を出して俺に差し出した


「ふふふっ遊園地に行った日にね、坂田くんに内緒でこっそり買ったの!」

「開けていい?」

「んー…うんっ!」


許可が出た俺は袋を開けて中からモノを取り出した


「キーホルダー…」

「それ見つけたときに何か坂田くんを思い出したから」


薄い水色の玉がいくつか付いた綺麗なキーホルダー


「あのよー…実は?」

「ん?」

「こ、これ…」


俺は部活終了の挨拶のときからずっと握っていた小さな白い袋を出して俺に差し出した


「開けていいの?」

「いいよ」

「あ…」

「ははっ、ソレ、すっげー偶然じゃね?」


苗字さんの手にあるのは薄い桃色の玉がいくつか付いた俺と色違いのキーホルダー


「それ見つけたとき苗字さんっぽいなーと思って」

「ふふふっありがとう!」

「おう、俺もサンキューな」


あー思わぬサプライズだった
一生大事にしよう
どこにつけようかな
やっぱ携帯かな


「苗字さん」

「ん?」

「い、一緒に帰んねぇ?送ってく」

「…うんっ!」


笑顔で頷いてくれた苗字さんを見てホッとした
断られたらたぶん明日学校休んでた


「大会まであと一週間くらいだねー坂田くん達と決勝戦で当たるかな?」

「さあなァ…そっちも強いし当たるんじゃねぇの?」

「トシも同じこと言ってた。坂田くんと決勝戦で試合するために今スッゴく練習頑張ってるよ」

「マジでか、当たったらめんどくせぇなー」

「いつかの試合で負けた借りを返すんだって」


あぁ、あの苗字さんに初めてかっこいいって言われた試合か
あの時は嬉しかったなー
頭ん中お祭り騒ぎだった


「あ、家ここだから」

「あー…(もう着いちまったのか…)」

「じゃあね」


坂田くんに手を振って家に入ろうとドアノブに手をかけたら左腕を物凄い力で引っ張られた


「さ、坂田くん?」

「苗字さん…」


彼はいつかの試合のときみたいに真剣でいつものヘラヘラした雰囲気ではなかった
坂田くんが握っている私の左腕が少し痛い


「苗字さん」

「ん?何?」

「27日の大会で…もし、もし俺が優勝出来たら聞いてもらいたいことがある」

「坂田、くん…?」


真剣に私の目を見つめるその目にどきどきした


「じゃあな」

「あっ!坂田くん!待っ…」


坂田くんは私の腕を離すと振り返ることなく走って行ってしまった


「聞いてもらいたいことって…」


どきどきと心臓が煩い
ねぇ坂田くん、私坂田くんのことが好きなのかも知れない

私はもう見えない彼の背を暫く見つめていた



全てを教えてくれなかった君へ


自惚れるなと自分に言い聞かす


100427

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