「うわー綺麗ー」

「たっけぇ」


お化け屋敷をなんとか抜けて(出口付近で繋いでいた手は離された)土方達と合流した(心なしか土方の顔が青かった)
もう結構時間は経っていたから少しだけ遊んで最後に2:2に別れて観覧車に乗った
今は観覧車の中。苗字さんと二人っきり


「坂田くん達は27日の大会に出るの?」

「あーまぁな、そっちは?」

「うちも出るよ」

「そっか」

「うん」


沈黙。苗字さんは夕日に染まる窓の外の景色を眺めていた
苗字さんの横顔があまりにも綺麗で俺はそれを眺めていた


「なぁ」

「ん?何?」

「苗字さんって好きな奴とかいる?」

「好きな人は…いない。気になる人ならいる、かな」

「…そうか」

「坂田くんは?」

「俺は…いる。いるよ、好きな奴」

「そっか…」


俺達の間に変な沈黙が流れた
そうか、苗字さん気になる奴いるのか…
やっぱり土方か?それとも俺…なんてことはねぇよな
あぁ、もうてっぺんだ
これで苗字さんが俺の彼女だったらキスの一つでもしてやるのにな


「ねぇ坂田くん」

「…あぁ、何?」


沈黙を破ったのは苗字さんで、窓の外に向けていた目はゆっくりと俺の目を捕らえた


「坂田くん達は知ってる?」

「何を?」

「金高の体育館の壁ね」


嫌な予感がした


「三日後に直るんだって」


あぁ、脳みそを揺らされた気分だ


「三日、後…」

「うん。三日後にはもう放課後に坂田くん達と会うこともなくなるんだね」


確かに金高の体育館が直ればもう苗字さん達は銀高で練習を続ける必要はなくなる


「そうか…よかったな」

「うん」

「三日後か…」

「坂田くん、もう着いたよ」


開けられたドアから苗字さんはスルリと出て行った


 
それはまるで俺の手をすり抜ける様に
 
 
二度と会えなくなるわけじゃないのに俺は胸の奥が苦しくなった


100426

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