「何やってんのお前」
「うぇ?」
土曜日の夜、コンビニに行った帰りに名前に漫画を返し忘れてたのを思い出して、返しに来たら名前の部屋のそこらへんに服が散らばっていて、名前は姿見の前で服を自分に合わせていた
俺と名前の家は割りと近いところにある
お互いの家を行き来するくらい仲のいい俺達に夜も昼も関係ない
まぁ夜は危ないんで絶対に名前から俺の家に来させるようなことはしねー
「だからお前何してんの?」
「んー…」
名前はさっき合わせてた服をまた床に放るとクローゼットから新たに服を取り出して合わせた
俺の話なんか聞いちゃいない
俺は名前のベッドに寝転んでその様子をじっと見る
「明日出かけんのか?」
「うん、坂田くんと遊園地ー」
坂田と云う名前が出た瞬間、俺の眉がピクッと動いた
このあいだ負けたのが本当に悔しかった
普段ヘラヘラしてて練習も満足にしてねぇ奴に俺は負けた
毎日竹刀を振り続けてた俺が馬鹿みたいに思えた
「坂田と付き合ってんのか?」
「えー付き合ってないよートシこそ明日栗子ちゃんとデートでしょ?」
「デートじゃねぇよちょっと遊びに付き合えって言うから付き合ってやるだけだ」
「何かその発言プレイボーイの発言みたいでヤダ」
栗子と云うのは顧問の松平の娘で一つ年下の女だ
何故か俺はそいつに気に入られて毎日1日でいいから一緒に出かけてくれと言って来るから、等々俺が折れて明日一緒に遊園地に行くことになっちまった
「明日どこに行くの?」
「あ?何か遊園地に行きてーらしいから遊園地」
「ホント?ふふ、私達と一緒の遊園地だったりして、明日会うかもねぇー」
「アホか遊園地なんていくつもあんだから会うかよ」
「そうかなー……ねぇねぇ!この服変かな?」
「あー?」
名前は服を手に持って俺に見せに来た
「別に悪かねぇけど俺は色は黒のがいい」
「トシの好みなんて訊いてませーん!」
「なら俺に訊くな」
「だって男の子と何処かに出かけたことってないからどんな格好すればいいか分かんないんだもん!」
「だもんって言われてもなー…別にオメーが可愛いと思う格好してきゃいいんじゃねぇの?」
「でも男の子が可愛いって思うのと女の子が可愛いって思うものは違うって沖田くんが言ってたよー」
「なんだよお前坂田に可愛いとか思われてぇのかよ」
「そんなんじゃな……ん?そんなんじゃないのかな?あれ?私坂田くんに可愛いって思われたいの?」
「は、お前坂田のこと好きなの?」
「…え、好きって…え?好き?」
おいおいマジかよ
何かコイツ混乱しだしたんだけど
「す、好きってあれだよね、その人のこと考えると胸がぎゅうってなったり、ドキドキしたり、ちょっと苦しくなったり…」
「まぁそんな感じだろ、」
「私坂田くんのこと好きなのかな…?」
「俺に訊くなよ、そんなの名前にしか分かんねぇことだろ」
「私もよく分かんない。けど最近、坂田くんが笑ってるの見るとドキドキする」
そんなこと俺に言われてもなー…
まぁ坂田が名前を好きなのは見てれば分かる
因みに両校の剣道部全員が坂田が名前を好きなのを知ってる
「あ、おい携帯鳴ってんぞ」
「あ、マナーモードにしてたんだった。誰から?」
「ん、」
俺が寝転ぶベッドに置いてあった名前の携帯を見ると…
「着信:坂田」
「さ…!?どうしよう!?ヤダちょっとトシが出て!」
「パス。俺が出たら坂田が変な誤解してまたつっかかって来るだろうし」
「う、だ、で、でも今好きなのかなとか言ってたのに電話とか…」
「早くしねぇと切れちまうぞ」
名前に携帯を突きつければ、名前は恐る恐る携帯を受け取って通話ボタンを押した
「も、もしもし…ううん!大丈夫起きてたよ、うん、うん、明日9時に駅前ね!分かった!うん……」
俺はベッドから起き上がり静かに部屋を出て名前の家を後にした
愛の戦士マヨラ13
人の恋路を邪魔する馬鹿は馬に蹴られて死んじまえ!
090412