「うふふっ捕まえてごらんなさ〜い」

「あははっ待てよ〜」

「うふふ、やあだよっ!太郎さんったら足が遅いのね!」

「あはは、言ったな〜本気出しちゃうぞー!」

「うふふ」

「あはは」

「うふふっ」

「あははっ」

「うふふ」

「あは…ブツッ



「あ、」



観ていたテレビが突然真っ黒い画面に切り替わったので後ろを向いて見ると、リモコンと書類を持って眉間に皺を寄せたトシが立っていた
どうやらテレビが突然消えたのは怪奇現象でもなんでも無く、トシがリモコンを使って電源を切ったらしい



「あ、じゃねぇよ」

「何で消しちゃうのよー」

「何観てんのコレ、何コレ、何か痒くなる何かヤダ」

「何って…B級ラブロマンス」

「お前コレ二流どころか三流だよ!落第点だよこんなクソ映画!」

「うん、マジでクソだった」

「じゃあ観んなよ!」

「何か突然ベタな恋愛映画が観たくなって」

「ベタってコレ、ベッタベタじゃねぇか!リーゼントのポマード並にベッタベタじゃねぇか!」

「まず名前が太郎と花子の時点で無いわー」

「だっせ」

「あ、全国の太郎さんと花子さんに失礼だよ!全国の太郎さんと花子さんに謝りなさい!」

「え…ダサイとか言ってすみませんでした」

「うん、よし!」

「え、何が?」



トシは私の部屋にある机の上に持っていた分厚い書類を置くとその机の前に座った
私はトシから少し離れたところで俯せに寝転び、両肘を畳に付いて手の上に顎を乗せた状態でトシの後ろ姿を観察する



「ねぇトシ」

「あ?」

「暇」

「俺は誰かさんの書類整理で忙しい」

「じゃあ自分の部屋でやんなよ」

「うっせー」

「あ、わかった。私と一緒に居たいんだ」

「うっせー」

「…………。」

「…………。」

「図星なんだ」

「ちげーよ」

「嘘」

「違うっつってんだろ」

「耳真っ赤」

「…………。」



トシは黙り込んでしまった
だけどそれは照れているからだと云うことは髪の隙間から見える耳を見ればわかる



「照れんなよ」

「何だお前」

「トシの彼女」

「そんなこと訊いてねぇよ」

「だって事実だもん」

「だもんとかキモい」

「キモいとかうざい」

「意味わかんねぇよ」

「ねぇ、」

「なんだよ」

「今日トシ非番でしょ」

「あ?あぁ、まぁ一応」

「私は?」

「非番だろ」

「そうなんだよ非番なんだよ十四郎くん」

「だからなんだよ」

「デートに行こうとか思わないのかね土方くん」

「…………。」



まただんまりですか土方くん
因みにトシは私と話しながらも手は休めずに書類に何やら書き込んでいる様子


いや、別にデートに行こうとか言ってるわけじゃないんだよ?
トシが忙しいのも分かってるし、どこかの腹黒ドS野郎のせいで仕事が増えてその始末に追われてるのも知ってるんだよ
ただね、暇なだけなの
友達が居ないわけじゃないけどなんとなく今日は友達と遊ぶ気分じゃないの



「あぁー…うふふっ太郎さーん私を捕まえてごらんなさーい」

「あんなクソ映画に影響されんなよ」

「別に影響されてませんー暇だから一人芝居してただけですぅー」

「うぜー」

「TSUDAYAにさっきの映画(DVD)返しに行くのめんどくさー」

「…………。」

「え、何故にだんまり?」

「この書類終わったらよー…」

「ん?うん、何?」

「あー、そのー…なんだ、」

「はい?」

「この書類終わったら、散歩がてら一緒にTSUDAYA行くか?あと甘味屋とか…」



なんだなんだ土方くん
もしかしてこれはデートに誘ってるのかい?



「おい、何か言えよ」

「うん。行く」

「ん、じゃあもうちょっと待ってろ」

「はーい」



せっかく赤みが引いていたのにトシの髪から覗く耳はまた少し赤くなっていた


それを見て私が微笑んだことをトシは知らない



Is the preparation good?



ツンデレ土方


090803

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