高校生の時に俺ら四人と一緒になって毎日馬鹿やって騒いだ女から久しぶりにメールが来た
内容は、話したい事があるから駅前の呑み屋に来て欲しいとのこと
それは別に俺だけじゃなくヅラ高杉辰馬にも送られたようだ
誰にも言っていないが俺はずっとその女のことが好きだった
『仲のいい友達』と言うポジションが崩れるのが怖くて結局何も言わずに卒業してしまった
だから久しぶりに会えると思うとドキドキした
「よーっす」
「おう」
「遅いぞ銀時」
「金時久しぶりじゃのー!」
呑み屋に着いたもののあいつは居なくて奥の座敷にはアホ三人が先に呑んでいた
「ごめーん!遅れたー!」
「貴様、呼び出した本人が遅れるとはどういう了見だ」
「まぁまぁ久しぶりに会ったんだから怒んないでよーヅラー」
「ヅラじゃない桂だ!」
名前は店員に自分の分の酒を頼むと俺の横に座った
最後に名前を見た時は可愛い女の子だったのに久しぶりに会った名前は綺麗な女になっていた
「みんな久しぶりだね〜てか全然見た目変わんないね」
「名前は随分綺麗になったぜよ」
「アハハ!やだ辰馬ったらー!」
俺が言えないことをサラッと言ってのける辰馬を少し恨めしく思ったが口には出さずに黙って酒を胃に流し込んだ
「で?今日はただ呑みに集まっただけかよ」
「晋助そんな焦んないでよーふふふ」
「なんだよ気持ちわりぃーな」
高杉は眉間に皺を寄せてニヤニヤする名前を変なものでも見るような目付きで見た
ニヤニヤするのを止め妙に改まった名前はゴホンっとわざとらい咳払いを一つして少し頬を染めた
俺らは空気を読んで名前が喋り出すのを静かに待った
「あのね、あたし結婚するの」
――頭を鈍器で殴られたような衝撃が走った
「何!?それは本当か!?」
「本当だよ、相手は会社の同僚なんだけど優しくて凄くいい人なの」
そう言って少し頬を赤くして幸せそうに笑う名前の顔を見るのが辛くて視線を下に向けたら名前の左手が視界に入った
その手の薬指には銀色に輝く指輪がはめられていて余計に苦しくなった
高校の時に俺がお前に告白していたら何か変わっていたんだろうか
その細い指に俺が指輪をはめれることは出来たのだろうか
心臓がキリキリと締め付けられて痛い
酒の所為もあって何だか泣きそうだ
「アッハッハッ!目出度いのー!今日は呑むぜよー!」
「うむ、よかったな名前」
「オメーみたいな女でも貰ってくれる奴がいてよかったな」
「えへへ、ありがとうー!あんた達には葉書とかじゃなくてちゃんと会って言いたかったんだ」
銀時、
優しい声で名前を呼ばれ顔を上げれば目の前に名前の顔があった
「銀時、あたし高校の時銀時のこと好きだったんだ」
俺は今でも好きだ、そんな事言ったらお前はきっと眉を寄せて困った顔をするんだろう
俺に笑いかけるお前はもう知らない男の嫁になるんだ
「名前」
「なあに?」
「おめでとう」
自分の気持ちに嘘をついてこの想いに蓋をするから、その分君が幸せになれますように
end
エイプリルフール
090401