トシが私の手料理を食べさせろと騒ぐので、チャーハンを作ってやった
始めに言っておくが、私は料理がまったく出来ない



「まっず!お前コレまっず!」

「2回も言わないでよ!!」

「お前だってこれ兵器だよ兵器!志村妙のダークマター(玉子焼き)の一歩手前だよ!」

「トシ、妙ちゃんの玉子焼き食べたことないでしょ!なんでそんな事言えるのよ!」

「近藤さん見てりゃ食べなくてもどれだけアレが危険なブツか分かるだろーが!」



失礼な!そこまで危険な食べ物作った覚えないわよ!!
自分でも自分の料理がどれほど不味いか知っている
少なくとも私の料理は妙ちゃんの玉子焼きみたいに失神したり記憶を失ったりはしないと自負している



「お前さーチャーハンも作れねぇとかろくな母親になれねぇぞ」

「チャーハン作れなくても立派なお母さんになれるもん!」

「チャーハン作れねぇ母ちゃんとかいらねぇんだよ!」



何コイツ腹立つ!チャーハン作れる母親の回し者かなんか!?
チャーハン作れる母親にどんだけこだわるのよ!
どうせ味わかんなくなる程マヨネーズぶっかけるくせに!!



「米べちゃべちゃだし、何か野菜切れてねぇから連なってるし、半生だし、塩胡椒振りすぎだし」

「そこまで言わなくてもいいじゃん…」

「言わねぇと直んねぇだろ」



じゃあお前はチャーハン作れるのか
チャーハン作れねぇ父親なんていらねぇよ



「うっぷ…きちぃー…」

「何がきつ……」

「あぁ?何だよ驚いた顔して」

「ぜ、全部食べたの…?」

「皿見りゃわかんだろ」



お皿の上には米粒ひとつ付いていなかった



「あれだけ文句言ってたのに…」

「だから次から上手く作れるようになれよ。俺はチャーハン作れねぇ母親はいらねぇ」

「もういいよ。うるさい、そのチャーハン作れる母ちゃん談義」

「よくねぇだろお前チャーハン作れねぇじゃん」

「作れないよ?」

「だからお前あれだよ…」

「どれよ」

「その、なんだ……」



なんだなんだ
さっきまで偉そうにふん反り返ってたのに急にちょっと赤くなってもじもじしだした



「俺はチャーハン作れねぇ母ちゃんは要らねぇんだよ」

「だからそれは分かったってば」

「だあーーっ!!もうっ!!鈍いなお前は!!俺と結婚すんのにお前チャーハン作れねぇからこのままだと嫁に貰えねぇだろ!」

「は?」



キョトンとする私をよそにトシは顔を真っ赤にして肩で息をしている
ちょっと待て
私とトシが結婚?
トシが言ってた「母ちゃん」って「妻」って意味なの?



「…黙んなよ」

「だって急で…びっくりして……」

「嫌か?俺と一緒になるのは」



眉を寄せて少し悲しそうな顔をしたトシを見て胸がきゅうっとなった



「い、嫌じゃないよ…!」

「なら嫁に来い!」

「……っはい、」

「泣くなよ」

「だ、だって〜…」



笑いながら私の頭をぐりぐり撫でる愛しいこの人を生涯支え続ける妻になるためにも、私はこれから料理(特にチャーハン)を作れるようになるために毎日練習しようと思います!



料理が出来ない彼女



(だから塩胡椒振りすぎだって!)
(トシはマヨネーズ掛け過ぎだって!)



090410

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