ジョージの前から逃げ出した名前には言っていないことがある



それは君達が実は両想いなんだってこと



「なぁ、フレッド!『かっこよ』ってなんだよ!」

「知らないよ!自分で名前に訊けばいいだろ!」



俺がそう言うとジョージはグッと押し黙った



「ジョージ?」

「なんかさー…」

「何?」

「俺、名前に嫌われてるみたい」

「はい?」



ないないないない
名前がジョージを嫌いなんて絶対ない
さっきの態度もそうだけど彼女は毎回ジョージと話すときありえないくらい真っ赤になって、恥ずかしそうに下を向いてもじもじしながら一生懸命会話をしようとしている
その姿は誰がどう見ても恋する乙女だ



「な、なんでそう思うんだよ」

「ん、なんかさ…毎回話すとき絶対下向いてるし」

「(それは恥ずかしがっているからで…)」

「俺と話てると吃るしビクビクしてるっつーか、警戒されてるっつーか…」

「(それは緊張しているからで…)」

「最終的には謎の言葉だけを残して俺の前から全力疾走で逃げるし」

「(それは、ね…)」



うーん、これはなんとも言えないぞ
いや、言えるんだけど『それは名前がジョージを好きだから緊張してるんだ』なんて口が裂けても言えない
名前に怒られるだろうし
俺の口から勝手に本人に気持ちをバラされたら嫌だろうし



「これを嫌われてると言わずになんと言うんですかフレッドくん」

「あぁー…んー、そうだなぁ…」



ジョージは両手で頭を抱えてうなだれた
どうしたもんか…
もう言っちまうか?
俺が名前に怒られればいい話だし、きっとそのあと二人はくっつくだろうし…



「なぁ、ジョ…」

「ウィーズリー!」



俺がジョージに名前の気持ちをバラそうとしたとき、名前を追いかけて行ったはずのチョウ・チャンが名前を連れて戻って来た



「名前…」

「(危ねー!バラすところだった!)」

「ほら、名前!」

「ちょっ、ま、チョウ!いいってば!と云うか無理だってば!」

「ウィーズリー、名前が話したいそうよ」

「(私の意見は無視ですか!?)」



そう言ってチョウ・チャンが名前を突き出したのにジョージは俺を見た



「え、何んだよジョージ」

「ウィーズリーに話って…フレッドのことだろ?」

「は?」



ジョージは不機嫌そうに眉間に皺を寄せて軽く俺を睨んだ
これには名前もチョウ・チャンもポカンとしている



「あ、あの…えと、ジョ、ジョージ…」

「………何?」

「話があるのは…と云うか…私が、は、話たいのは、貴方で…フレッドはどうでもいいって云うか…別に話すことないって云うか……」



名前は例の如く、顔を真っ赤にし、俯き、吃りながら一生懸命話している
別にいいんだけどさ、俺の言われよう酷くないか?



「わ、私が話たいのはジョージだよ…!さっきもその…先週のクィディッチおめでとうって言いたかったのと…か…かかかっ…かっこよ…かった、って言いたくて……」



そこまで言って名前は湯気が出るんじゃないかってくらい真っ赤になって止まった
そんな『かっこよかった』って言うだけでここまでなるとは…
日本人はみんなこんなに恥ずかしがり屋なのか?



「ジョージ!ぼうっとしてないで何か……」



からかい半分で棒立ちだった相棒の肩に腕をかけて顔を見ると、相棒まで名前に負けないくらい真っ赤になっていた



「え、えぇ…相棒…?」

「ちょ、今は見ないで!」



ジョージは右手を口に宛てて真っ赤な顔の半分を隠した



「う、うぁぁあっ!ごめんなさい!もう無理!さようなら!」

「え、ちょっ、名前!?」



これまたジョージと同様棒立ちしていた名前だったが、(俺的に)このなんとも甘酸っぱくむず痒い空気に堪えられなくなったのかまた走って逃げた



「何してるのよウィーズリー!」

「え、あ、何!?」

「何じゃなくてここは名前を追いかけろよ相棒!」

「う、うん」



ジョージは少し躓きながら慌てて名前を追って走り出した



「…凄くむず痒いわ」

「同感だよ」



残された俺達は部屋に戻ってお互いの相棒が帰って来るのを待つとしよう




走中
走中


090803

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