隠すの…続き





「あ、まただ」



また私物が無くなってる
これで何回目だろう
部屋に置いていた物が無くなったのだからグリフィンドール生の誰かがやったとしか思えない
誰がやったのかはわからないが原因は分かっているつもり


たぶん原因はフレッド
フレッドは人気者で、彼を、彼らを好きな子は多い
だから最近フレッドと何故かやたらと仲のいい私を気に入らない者の犯行だと私は思っているのだよ諸君


私だってフレッドが好きなのだ
ただ指をくわえて見てるだけじゃなく頑張って積極的に話し掛けた結果、今の様に"仲のいい女友達"の地位につけたのですよ
失礼ですけど陰でこんな嫌がらせをするような人はフレッドに好いてもらえないと思うよ
…だからと言って自分がフレッドの彼女になれるわけでもないんだけどね


私の部屋から忽然と姿を消した物は一冊の本
フレッドと談話室で恋のイメージについて語った日に図書館から借りてきたやつだ
私の恋がグレーなのはこの虐めみたいなのも含まれていたりする
あぁーあ、あの本まだ読んでる途中だったのにな


とりあえず弁償とかになったら嫌なので虱潰しに探そうと、現在地から一番近かった談話室に来てみた



「あ、」



そこには暖炉の前で本を読む双子のどちらかが一人
しかもその読んでる本と云うのは私が探していた本と一緒
え?あれ私の?
て云うかあそこに居るのはジョージなのかフレッドなのか…



「いつまでそこに居るの?」

「えっと…」

「フレッドだよ。そんなとこに居ないでこっち来いよ」



手招きをされたので怖ず怖ずと彼に近づく
仲がいいのにフレッドかジョージか分からなかったなんてやっぱり怒るかな?
ましてや好きな人なのに分からなかったとか、ホント笑えてくるよ



「俺かジョージかわかんなかったの?」

「ごめん…」

「気にするな!ママでさえ時々間違うんだ」



そうは言ってもやっぱりショックだ
私はジョージじゃなくてフレッドが好きなのに見ただけじゃわからないなんて



「あ、そういやコレもしかして君の?」

「え?フレッドのじゃないの?」

「違う違う、俺恋愛小説なんて読まないし!」



そう笑いながらフレッドが差し出してきた本を受け取る
私のかどうかわからないので挟んでいた栞を見てみる
私の栞は鮮やかな紫色
藤の絵が書かれている
和風で私はとても気に入っている
それに端には小さく日本語で下の名前が書かれているから見たら分かる



「…私のだ」

「やっぱり。その栞すごく綺麗で見覚えあったから。いつも使ってただろう?」



そんなこと知っててくれたんだ!っと、ついつい嬉しくなる
恋する乙女は些細なことで喜んでしまうものだ



「ありがとうフレッド!この本探してたの」

「どう致しまして…」

「フレッド?どうかした?」

「あのさ…」

「なに?」

「その本、暖炉の灰の中にあったんだ」



言いにくそうに、私の顔色を伺うように、それでいて真っ直ぐ私の目を見据えて彼は言った


知られた…
フレッドに知られた
私が虐めにあってることに
私の恋のグレーな部分を


フレッドには知られたくなかった
例えジョージに知られたとしてもフレッドには知られたくなかった
虐められてる惨めな女なんて思われたくない
直接関係ないにしろ、もし原因がフレッドだと知ったら彼はきっと悲しむし傷つく



「そう…きっと談話室に置き忘れしたときに誰かが悪戯で入れたのね、酷いことするわ」

「嘘だ。瞳が揺れてる」

「嘘じゃないわ」

「もしかして虐めにあってるのかい?」



脳みそが揺れた気がした

私はただあなたに近づきたかった
彼女になれたらそれは嬉しいけど、私は彼女になんかなれなくてもよかった
友達としてでもいいからあなたが笑ってくれればそれでよかったのに
それだけだったのに…



「…フレッドにはわかんないよ……」

「え?」



鼻の奥が痛くなって、不意に目から涙が零れた



「フレッドにはわかんないよ!…どんなに頑張っても私より可愛い子なんて山ほどいるし、こんな、こんな嫉妬ばっかりの女より…虐められてる女より…似合う子なんていっぱ……」



私の言葉は途中で途切れた
泣きながら喚く私をフレッドが抱きしめたからだ



「フレッ……」

「俺はお前がいい!!」

「フレッド…?」

「虐められてるなら俺が守ってやる!俺はお前が……ッ!」



そこまで言ってフレッドは私を離した
フレッドは眉を下げて悲しそうに笑っている



「ごめん…あはは、君にここまで思われてるその男が羨ましいよ」

「え?」

「けど虐めからは守ってあげたいからなんでも言って」



彼は何を言っているのだろうか
私の語学力はいつから低下したんだ
君にここまで思われてるその男が羨ましい?
その男は今目の前にいる君だよフレッド


私は両手をぐうにしてグッと力を入れた



「フレッド!」

「何?」

「私はあなたが好き!ジョージでもリーでもロンでもハリーでもなくフレッドが好……」



本日二回目の抱擁
フレッドは言葉の途中で抱きしめるのがお好きみたいね
それよりも私は何故抱きしめられてるんだろうか



「俺も!俺も好きだ!」



ぎゅうっと私を抱きしめるフレッドの腕に力が入った



「ふえー…」

「……変な声出すなよ」

「だって何か夢みたいで…」

「夢じゃないよ」

「うん…」



さっきまで泣き喚いてたのが嘘のように私の心臓は穏やかな何かが流れた



「恋はやっぱり少し甘いね」

「これからはガムシロップ100杯分愛してあげるよ。イメージカラーも俺がピンクに染めてあげる」

「ふふふ、期待してる」



これからも私は苦いグレーな気持ちになるだろう
嫉妬したり、怒ったり
でもその度にフレッドが甘いピンクに変えてくれる気がする
そんな気がするんだ



抱き合う私達の足元には本が落ちていて、栞をしていたページが開いていた
そこにはこう書かれていた



I will dye to your color.

私はあなたの色に染まるでしょう



090807

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