深夜の万事屋
居間には万事屋の家主とその彼女



「二人共寝た?」

「あぁ、」

「……何、暗い顔して」

「…やっぱ止めようぜー恥ずかしいってー神楽はともかく新八は16にもなってサンタなんか信じてねぇって!朝起きたときニヤニヤされるのがオチだって!」

「信じてないのはわかってるけど私がどんな思いでお通ちゃんの通販限定クリスマススペシャルフィギュア手に入れたと思ってるの!買いたいけど万事屋にも家にもPCないから買えないってかなり落ち込んでた新八くんを見てPC持ってた私はどんな思いしてたか銀ちゃんにはわかんないでしょ!」

「お前そんなこと言うけど俺が神楽の欲しがってたうさぎの縫いぐるみ買うのどんだけ恥ずかしかったか知らねぇだろ!成人過ぎた男がうさぎの縫いぐるみを買う気持ち悪さ!つーかあれ?お前が買いに行けばよかったんじゃね?」

「知らないわよそんなこと!だいたいあんたこんな時じゃないと二人に素直にプレゼント渡さないでしょ!」

「お前だって俺あいつらのお父さんでもないのにお父さんみたいなこと……つーか何もやらなくてもサンタさんがけん玉くれるから!こそ泥みたいなサンタさんがけん玉配ってくれるから!」

「何わけわかんないこと言ってんの!ほら、私神楽ちゃんのとこにプレゼント置いてくるからあんたは和室行って新八くんの枕元にプレゼント置いて来なさい!」

「…しょーがねぇなー…」



俺は新八が寝ている和室に足を運ぶ
明日はみんなでクリスマスパーティーをしたいと神楽が騒ぐのでクリスマスパーティーをする予定だ
だから今日は新八が泊まっている
あー…なんで俺結婚もしてないのにお父さんみたいなことしてんだろ…
名前と話合って決めたこととは言え何か照れ臭い
新八にはお通の通販限定クリスマススペシャルフィギュア
神楽には結構でかめのうさぎの縫いぐるみ
定春には特大ビーフジャーキー
照れ臭いけど明日の朝起きたときのこいつらの反応が楽しみで満更でも無かったりして……



「おはよう…」

「あら、珍しい銀時が一番に起きて来るなんて」

「…銀さんだってたまには早起きすんだよ」

「名前ちゃん銀ちゃんダメガネ大変アル!」

「名前さん銀さん!」



寝癖にパジャマの餓鬼二人が慌てて寝床から飛んで来た
その手には包装された箱が



「おはようさん」

「おはようー二人共慌ててどうしたの?」



名前も俺もプレゼントのことは知らないふりをする
名前なんか女優になれるんじゃないかと思うくらい普段通りだ
母親の様に柔らかな笑みを浮かべながら緩やかな口調で神楽と新八に問い掛けてる



「大変アルよ!サンタが来たネ!」

「名前さん銀さんコレ…」



神楽は目を爛々と輝かせて、新八はやっぱり気付いているみたいで申し訳なさそうに俺達を見ている



「ホント?よかったわねー何貰ったの?」

「今開けるアル!」

「あの、僕…」

「新八はサンタに何貰ったんだよ」

「え、」

「なんか良いもんだったら俺にもくれよ」

「新八くんも開けてみせてよ」

「…はいっ!」



神楽はビリビリと包装紙を破いて、新八はこんなときでも地味に綺麗に開けている



「欲しかったうさぎの縫いぐるみアル!今年は肉まんじゃないネ!」

「こ、これ僕がずっと欲しかったお通ちゃんの限定フィギアッ!」



神楽はうさぎを高く持ち上げて回転しだした
新八はプレゼントが予想外だったのか目を丸くしている
お前ら二つとも高かったんだぞコノヤロー
今年は奮発したけど来年はけん玉か肉まんだからな



「ワンワン!」

「定春もビーフジャーキー貰ったの?よかったねー」

「ババアに見せてくるネ!」



神楽はうさぎを抱え、定春を連れてババアに見せに下の店へと降りて行った



「名前さん銀さんありがとうございます!」

「ん?なんのこと?」

「銀さんと名前ちゃんは何にもしてねぇぞ」

「ふふふっ!僕もお登勢さんのとこ行って来ます!」



新八もフィギアを片手に万事屋を飛び出して行った



「…ババアにあんなもん見せても反応に困るだけだぞ」

「よかったね喜んでくれて」

「あー…まぁな」



照れ臭くなって頭を掻いた
実はあいつらだけじゃねぇんだけどなー…
俺はソファーから立ち上がって和室に来た
箪笥の1番奥に隠してた物を手にもってまた居間に戻る



「名前」

「んー?何ー?」

「あー…その、なんだ、メリー…クリスマス」



朝食を作ってる名前の後ろに回って細い首にネックレスを付けてやる



「これ…」

「言っとくけど安物だぞ。あいつらのプレゼント買ったからあんまたけぇもん買えなかったんだけどよ」

「ふふふ、ありがとう!びっくりしちゃったよ」



こっちを向いて名前は嬉しそうに笑った



「私も銀ちゃんにプレゼントあるんだ」

「おっ、マジでか」

「名前ちゃんお腹空いたアルー!」

「神楽テメー空気読めやコラァァァアッ!!!」



せっかくいい感じの雰囲気だったのに!
つーか俺プレゼント貰ってねぇ!



「煩いアル!今の私は無敵ネ!」

「頭に寝癖つけた餓鬼が何言っちゃってんのぉ〜?」

「銀ちゃんなんかいつも寝癖頭ネ!」

「んだと餓鬼コラァァァアッ!!」

「名前さん用意手伝います」

「ありがとうーじゃあアレ運んでくれる?」

「はーい」

「ほら銀時も神楽ちゃんも着替えて顔洗ってきなさい」

「「はーい」」



洗面所に飛んで行った神楽
俺はのろのろと着替えるために和室に向かう
後ろから名前が追いかけてきて耳元にきてこそっと話し掛けてきた



「プレゼントは夜にあげるね」



……銀さん良からぬ想像しちゃいそうなんですけど






title by 透徹