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「ん…」
朝日に照らされキラキラと輝くステンドグラスを一人静かに眺めていると、後ろの長椅子から彼の声が聞こえてきた。
「あ、起きた?おはようアレン」
「もう起きてたんですか…。っいたたた…体バッキバキだ」
「大丈夫?だからアレンは宿とっていいよって言ったのに…」
「君みたいな粗大ゴミ不法投棄したら教会の方に迷惑でしょうそれくらい考えなさい馬鹿」
「寝起き一発目でよくそんな辛辣な言葉がポンポン出てくるね」
光り物が好きな私は、昨日訪れたこの教会のステンドグラスに一目惚れしてしまった。普段ならアレンがイカサマで巻き上げたお金で宿をとるんだけど、どうしてもここにいたかった私は教会の方に頼み込んで一晩宿泊することを許してもらった。…まではよかったんだけど。
私のワガママにアレンを付き合わせるのは申し訳ないから、アレンはいつも通り宿とってゆっくり寝てと言ったのにあろうことか奴はそれを断ったのだ。私のことは気にしなくていいよって言ったら誰が君のことなんて気にしますか調子のんなブスとか言われたからそれ以上つっこむのはやめた。
「ホラ、ぐずぐずしてないで出発の準備してくださいよ」
「えー、まだ見てたいよ」
「ワガママ言うなまな板」
「誰がまな板だ!」
私たちは今、エクソシストの総本部である黒の教団に向かっている。
私たち二人は三ヶ月前、自らをエクソシストと名乗ることを許された。が、そのためには本部へ行って挨拶やらなんやらをしなければならない。本部を毛嫌いする師匠はアレンをハンマーで殴り気絶させ、私がそれにプチパニックを起こしている間に失踪した。嫌いだからって挨拶も出来ないなんてダメな大人の見本である。あのクソ師今度会ったら覚えてろ。
「リサ、ホントに行きますよ」
「うー…」
「…僕より年上のくせにどんだけワガママなんですか君は」
「…ごめんなさい」
「…ったく、適当に朝食買ってきますから、それまでには支度済ませといてくださいよ」
「!」
呆れたようにため息をつき、アレンはドアに向かって歩き出した。アレンは、いつもこうして私に合わせてくれるのだ。そのたび文句は嫌ってほど言うけど、それでも私を優先してくれる。
「…ありがとう、アレン」
「…どういたしまして」
私がアレンを大好きな理由は、こういうところにあるんだと思う。
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