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すやすやと寝息を立てるリサを見つめる。可愛らしい顔立ちをしたこの少女は、一昨日入団したばかりの新人エクソシストの一人だ。同日入団した片割れには常日頃から罵られているそうだが、ぱっちりとしたつぶらな瞳に長い睫毛、すっと通った鼻筋やキメの細かい白い肌を携える彼女は間違いなく優れた容姿の部類に入る。人物像が見えてこないとは言ったものの、その少年が天の邪鬼な性格であることだけは確かだ。

「リサ、もう着くさ」

愛らしいその寝顔をずっと見ていたい気持ちもあるが、そろそろ乗り換え駅に到着する。遠い異国の任務では何度も汽車を乗り継がねばならず億劫だ。ぽんぽんと彼女の肩を叩くと、長い睫毛の隙間からすっと一筋の涙が流れた。

「ええ!?どしたんさリサ、オレ何かした!?」

突然の涙に動揺してしまう。いやいやオレ何もしてないよな?静かに目を開けたリサは寝惚けているのか数秒間フリーズした後、あわあわとするオレの姿にキョトンと目を丸くした。

「わ、ごめん寝てた…」
「いやそれはいいんだけどさ、急に泣き出すからビックリした」
「え、うわほんとだ」

自らの濡れた頬に気づき細い指でそれを拭う。ごめんねと再度謝る彼女はどこか不安げだ。どうしたのか尋ねると、ちょっと嫌な夢見て、と眉尻を下げて笑った。

「アレンが任務で大怪我してる夢で…ごめんねビックリさせて」
「…随分心配なんさね、ソイツのこと」
「周りを守るためならどんなに怪我しても構わないと思ってるようなタイプだからさ…」

怪我してないといいんだけど、と目を擦る彼女はやはりまだどこか不安げで。日々罵倒してくるような男が夢にまで出ることも、それを想って涙を流すことも、そうそうあることでは無いと思う。苦楽を共にした姉弟弟子、育んだ絆はいつの間にか別の感情へと変化したのだろう。心配そうに窓の外を見つめるリサの頭をぽんと撫でた。

「そんなに想われて幸せさね、そのアレンって奴は」
「ちょ、ちょっと、変な言い方しないでよ」

カマをかけるような言い方をすれば、素直な彼女は頬を染めて反論した。その反応はオレの予測がビンゴであることを物語っていて、思わず笑みが漏れてしまう。にんまり笑うオレを見て耳まで赤く染めた彼女にビンタをくらったが、慌てふためくその姿が愛らしくて不思議と不快感はなかった。アレン・ウォーカーに会うのが、少し楽しみだ。






2020.8.16


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