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初任務に繰り出すアレンを見送った翌日。何をしていても落ち着かず、廊下や食堂を右往左往していたところをコムイさんに呼び止められた。室長室に来るよう告げられ、ついに私も任務が与えられるのかと背筋が伸びる。室長室のドアを開くと、そこにはオレンジ色の髪をした長身の男の子が立っていた。団服を身に纏っている彼は私と同じエクソシストであろう。きっと歳も近いだろうし、仲良くなれたらいいな。こちらに振り向いた彼の顔を見つめながらそんなことを考えていると、翡翠色の隻眼が桃色のハート型に変化した、ような気がした。

「ストラーイク!!」
「…え?」

鼻の下を伸ばしこちら目掛けて飛びついてきた彼に、防衛本能からか平手打ちを繰り出してしまった。出会い頭にビンタなんてさすがに失礼なことをしてしまったと一瞬反省したも、痛いさー!でもストライク!と諦めず飛びつこうとしてくる彼に苦笑を浮かべてしまう。私と同じように苦笑を浮かべたコムイさんにそんなに警戒しないで、と宥められたがこれを警戒しないというのは無理な話ではないだろうか。



「コホン、では改めて。彼はエクソシストのラビ。そして彼女は一昨日付けで入団したリサちゃんだ。仲良くしてね」

ラビ、というらしいこの先輩エクソシストはどうやら極度の女好きらしく、女性に対してはどうも軟派な態度をとってしまうんだとか。どうして私なんかが彼のストライクゾーンに入ってしまったのかはよくわからないが、先程のは彼なりの挨拶だったということで自分を納得させた。
コムイさんから言い渡されたのは、ロシアで起きているという怪事件の調査。リサちゃんは初任務だから色々教えてあげてね、とのコムイさんの言葉に快諾の返事をするラビの隻眼はやはりまだハート型で、引き攣った笑みが漏れたのは言うまでもない。







「こーんな可愛い子と任務だなんて、オレは幸せ者さ!」

任務先への移動は基本的に汽車を用いるらしい。ボックス席で向き合って座る彼の鼻の下は相も変わらず伸びていた。普段どこかの若白髪にブスだの馬鹿だの罵倒され続けている分こうして歯の浮くような台詞をポンポン投げかけられるとどうにもこそばゆい。

「あはは…そんなの言われたことないから照れくさいよ」
「そんなに可愛いのに言われたことないわけないさ!」
「いやいや…いっつもブスだのなんだの言われてるよ」

言ってて悲しくなってきた。大好きな人にブスと言われ続ける私って一体。

「それってリサと一緒に入団したっていうもう一人の新人クン?」
「そうそう。紳士気取りのくせに私には酷いから嫌になっちゃう」

思わず溜め息が漏れる。私のことすぐ馬鹿だなんだと言ってくるがアレンだってそこそこの馬鹿野郎だ。人のためアクマのためと後先考えず突っ込んで、結果たくさん傷ついて帰ってくるんだから。きっと今も任務先でたくさん怪我しているに違いない。

「オレまだ会えてないからソイツのこと全然知らないんだよね。どんな奴なん?」
「えー…若白髪、紳士を気取った鬼神、顔にヘンテコな傷がある、大食漢」
「おお…全然人物像が見えてこないさ」

会えばわかるよ、と告げ窓の外を眺める。この景色の遥か先でアレンは戦っていて、運が悪ければもう二度と会うことは叶わない。死ぬ気がないから大丈夫という彼の言葉を信じる自分と、それでも不安を感じてしまう自分が混在する。無理して傷つく彼の姿が浮かんでは消え、不安をかき消すようキツく目を閉じた。


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