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「気をつけてね、アレン」


任務に向かうアレンと神田を見送りに、コムイさんとリーバー班長と地下水路に来た。入団した次の日にもう任務が入るんだ…。エクソシストの証である団服のコートを身にまとうアレンを見て、なんとも言えない気持ちになった。今まではいつも二人一緒だったけど、これからはそうじゃないんだ。アレンは私じゃない人と一緒に戦っていく。こんなこと考えたくないけど、私の知らないうちにアレンが死んでしまうなんてことも、十分にあり得るんだ。


「…リサ」
「え?わっ」


暗い気持ちになっていると、アレンに呼ばれ頭をくしゃくしゃと撫でられた。


「大丈夫だから、そんな顔しないでください」
「アレン…」
「僕も君と同じです。死ぬ気がないですから」
「……うん」
「…ちょっとは僕を信じろ馬鹿女」
「うん…、は!?なにそれ!」
「何いっちょまえに深刻な顔してんですか。大丈夫だっつってんだから少しは信用しろアホ」
「……うん…」
「…絶対、帰ってくるから」


そう言い残し、アレンは神田たちの待つ小船に乗り込んだ。遠くなっていくアレンたちを見つめ、ひたすら手を振った。やがて彼らを乗せた船は見えなくなり、私は手を降ろす。


「リサちゃん、ボクたちは戻るけど」
「…すいません、もう少ししてから行きます」
「そう、なるべく早く戻っておいでね」
「はい」


コムイさんとリーバー班長は階段を上がり戻っていく。それを確認すると、私はその場にしゃがみ込んだ。
たくさん怪我するんだろうな。相手も神田だし、ちゃんと連携とれるのかな。喧嘩してる間にアクマに襲われたりしないかな。心配なことだらけだ。
正式にエクソシストになったんだから、こんなことでいちいち気をとられてちゃダメなことはわかってる。けど、心配じゃないわけないじゃないか。


「リサちゃん」


背後から名前を呼ばれる。この高くて可愛らしい声は、ほかでもない、


「リナリー、ちゃん」
「女の子がこんなところでしゃがみ込んでちゃダメよ。戻りましょ」
「…うん、ごめんね」


リナリーちゃんに立たされ、地下水路を離れる。
もっとしっかりしなきゃ、ダメだよねこんなんじゃ。これからは伯爵を倒すまで戦い続きの毎日なんだから、早いとこ慣れなくちゃ。こんな中途半端な気持ちでいたら足手まといになっちゃうもん。姉弟子なのに、アレンの方がよっぽどしっかりしてる。


「…リサはアレンくんが大好きなのね」
「!?」


思わぬ言葉に足が止まった。ななな、何を…!


「あら、見ればわかるわよ」
「ええ!?」


待って待って、知り合ったの昨日だよね!?おかしいよねおかしいよね!?


「どこが好きなの?」
「ちょっと待ってよそれ言わなきゃダメなの?」
「当たり前でしょ」
「うーん…もう何年も一緒にいるし気付いたら好きになってて…」
「うんうん」
「ホントに優しいし、私のことわかってくれてるし…」
「それで?」
「…〜〜〜っ、もうだめ許してリナリー!」
「まだ早いわよリサ」


出会って間もない人にこんな話をすることになるなんて。いわゆる恋話なんてモノをしたことがない私は、ひたすら戸惑うしかない。それに、


「…あいつが見てるのは、私じゃないよ」
「え?」
「……なんでもない!それよりリナリーはなんかないの?」
「え、私はないわよ」
「えーっ」


そう、アレンが見てるのは私じゃない。他に好きな女の子がいるとかじゃなくて。アレンの見据えているものは、守りたいものは、そんな簡単なものではない。
アレンの背負っているものは、私たちとはスケールが違いすぎるのだ。




2011.6.17


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