opening
白髪の少年というのは、少しおかしな響きだ。その二つの単語は本来併用される言葉ではない。けれど、私の目の前にいるのはまさしく、白髪を生やした小さな、本当に小さな少年だった。
師匠が腰を降ろし、少年に目線を合わせる。師匠の肩越しに見える彼の色素の薄い瞳は、光を宿してはいなかった。私とそう変わらない背丈、きっと年も同じくらい。そんな幼い少年の目には、大切な人を手にかけてしまったことへの絶望しか映っていない。
彼のしたことは正しい。それはわかっていても、やはり苦しみからは解放されないのだ。かけがえのない人を二度死なせてしまったことに、変わりはないのだから。
アクマに内蔵された魂に自由はない。永遠に拘束され、伯爵のオモチャになる。つまり、
「破壊するしか救う手はない」
そう言う師匠の声は、彼の耳に届いているのだろうか。ぴくりとも動かずにどこか遠くを見つめる彼は、泣くことも叫ぶこともせず、ずっと同じ表情で佇む。そんな彼が痛々しくて、悲しくて、
「エクソシストにならないか」
幼いながらにも私は、支えてあげたいと、強く思った。
2012.5.26
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