「俺ね、昨日告白しようとしたんスよ」
「そう、なんだ」

昼休み、自分の席でお弁当を食べていたら、突然後ろに振り向いた黄瀬くんにそう告げられた。やっぱり、昨日のあれは告白するつもりだったんだ。ずん、と胸が重くなって、まるで鉛でも落とされたみたい。耳を塞いでしまいたい衝動に駆られつつ、黄瀬くんの言葉を待つ。

「放課後の教室に二人きりでさ、夕陽なんか差しちゃって、この上ないシチュエーションだったんス」

見てたよ、なんて言えなくて、へえ、と短く返す。知ってるよ、すごくお似合いだったよ。泣きたくなるくらいに。
せっかく黄瀬くんが話しかけてくれてるんだから、ちゃんと聞いてあげなくちゃ。本当は聞きたくなんてない、今すぐ逃げ出したい。でも、聞かないのも聞かないので、なんだか怖くて。

「でもね、言えなかった」
「…どうして?」
「…だって、フラれたら今度こそおしまいじゃないスか」

黄瀬くんの笑顔は、今にも崩れてしまいそうだった。悲しみを隠して笑う彼のその表情が、私にまで刺さる。スカートの裾を握り締めて、ぐっと涙を堪えた。気を抜いたら、悲しくて泣いてしまいそうだ。

「二回もフラれたら、さすがに諦めなきゃっしょ」
「…」
「あの子のこと諦めるんだって思ったら、急に死ぬほどつらくなってさ」

黄瀬くんの言葉が、ぶすぶすと胸に穴を開けていく。傷口から彼への気持ちが溢れだして、でも伝えることは出来なくて。死ぬほどつらいのは、私だって同じだよ黄瀬くん。
黄瀬くんは机に片肘をついて、ぐしゃぐしゃと髪を掻いた。長い前髪に隠れて目元は見えないけれど、彼の唇は弧を描いていて。彼は、自嘲するように笑った。

「俺、あの子を諦めるなんて出来ない」

奈落の底に、叩きつけられたような錯覚をした。黄瀬くんは、本気であの子が好きなんだ。軽い気持ちなんかじゃない、あの子だけを好きなんだ。彼の心に私の入り込む隙なんて、存在しなかったんだ。

「…そっか」

笑えていたのかなんて、私にはわからない。いっそ死んでしまいたいくらい、ぐちゃぐちゃに潰れた心を隠して、無理矢理笑顔を貼り付けた。


心臓がいたむのです
この気持ちはどうすればいい?

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