私と黒子くんは付き合ってる。影が薄いだのなんだの言われてる彼に恋して、頑張って近付いて、仲良くなるうちに黒子くんが告白してくれた。好きになってくれるなんて微塵も思ってなくて、まさかの告白に本当にビックリしたのは割と最近の話だ。


「綾瀬さんはこっちです」
「え、あ、ありがとう」


紳士な黒子くんは並んで歩く時絶対私に車道側を歩かせない。そういうところも、彼の好きなところの一つ。
今は部活を終えて一緒に帰ってるんだけど、黒子くんは疲れてるはずなのにそんな素振りを一切見せない。さらには私を家まで送ってくれるというんだから、むしろ申し訳なくなってしまう。けれどそう伝えても、黒子くんは絶対送ると聞かないのだ。


「黒子くん、あのね、やっぱり私、」
「送りますよ」
「えっ…」
「こんな時間に女の子一人なんて危険です。綾瀬さんに何かあったら困りますから」
「でも、黒子くん疲れてるのに…」
「ボクがそうしたいんです。嫌ですか?」
「い、嫌じゃないよ、全然!」
「ならよかった」


ふ、と柔らかく微笑む黒子くんが眩しくて、思わず下を向いた。ああ、顔が熱い。なんでみんなわからないんだろう。黒子くんは、こんなにもかっこいいのに。いやでも、みんなが黒子くんの良さに気付いちゃったら絶対モテちゃうから、やっぱりダメ。私だけの黒子くんでいてほしいなんて、私はどこまでワガママなんだろうか。


「綾瀬さん?」
「え?」
「どうかしましたか?難しい顔してましたけど」
「えっと…」
「?」
「その…みんなが黒子くんの良さに気付いて、モテちゃったら、嫌だなあって…」
「え…」
「ご、ごめんね、重いよねこんなこと…。でも、やだなって、思ったの」


黒子くんの反応を見るのが怖くて、足元を見ながら話す。呆れられたかな、嫉妬深いって思われたかな。でも、これは私の本心だから、どうしようもない。


「綾瀬さん」
「…」
「顔を上げてください、綾瀬さん」
「…、!」


言う通りに顔を上げた瞬間、思ったよりずっと近くにあった黒子くんの顔が更に近付いて、唇が触れた。私の唇と黒子くんの唇が、触れたのだ。

驚きすぎて、目を閉じることも出来なかった。ゆっくりと唇が離れて、黒子くんと目が合う。こんなに近くで黒子くんを見るのは初めてだ。


「…く、くろこ、く」
「…すみません、我慢出来なくなっちゃって」


頭が沸騰しそうだ。切なそうに呟く黒子くんから、目が離せない。恥ずかしい、けど、嬉しい。頭の中が黒子くんで埋め尽くされてく。


「重くないです。むしろ、嬉しい」
「え?」
「…綾瀬さんは可愛くて男子にも人気なので、ボクはいつも心配なんですよ」
「そ、そんな」
「綾瀬さんが同じこと考えてて、よかったです」


ふわりと笑う黒子くんは、やっぱり誰よりも素敵で、かっこよかった。この笑顔を知ってるのは、これからも私だけでありますように。そんなことを、夜空に浮かぶ星に願った。



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ピュアッピュアになった

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