「よっみょうじ!」
「あ、高尾!」

梅雨の時期にしては珍しくカンカン照りの今日、俺は相も変わらず部活に勤しんでいた。やっと訪れた休憩の時間、自分でも引くくらいかいてしまった汗を流そうと外の水道に水を浴びに来たら、そこにはクラスメイトのみょうじがいた。彼女はサッカー部のマネで、足元にいろいろ用具が置いてあるところを見るとどうやら仕事中らしい。ほっせえ体でパタパタ動き回ってて、倒れねえのかなってちょっと心配になる。

「高尾部活は?」
「休憩中ー」
「そーなんだ。お疲れ!」
「みょうじもなー」

にかっと無邪気に笑うみょうじに、どきんと胸が高鳴って。というのも、俺は彼女に恋をしているのだ。いつも元気でにこにこしてて、努力家で。健気に部を支えるその姿を、気付けば目で追っていた。

「外日差し大変だろ?無理しすぎんなよー」
「体育館も暑いでしょ!バスケ部厳しいし高尾死なないでね」
「死なねーよ!」

みょうじと話すだけで俺は元気になれるから大丈夫でっす、と面と向かっては言えないので、心の中で呟いておく。けどこいつ、ほんと大変なんだろな。サッカー部マネ少ねえらしいし、こいつ色白だから日焼けすると真っ赤になって大変ってこないだ言ってたし。1年なのにもう大量の仕事をこなす彼女は、疲労も相当溜まっているのだろう。今度飲み物でも奢ってやろっかな。

「ね、高尾暑い?」
「は?そりゃあ…」
「だよね。えいっ!」
「!?」

彼女の問いに肯定で返した途端、隣から水が飛んできた。みょうじが小さなその両手に溜めた水を、それはそれは楽しそうに俺にぶっかけてきたのだ。へへ、といたずらっ子のように笑うみょうじに、自分でもアホらしくなるくらいときめいて。あーもうなにこの子、めっちゃ可愛いんですけど!

「じゃ!もう行くね!部活がんばれ!」

山ほどの用具を両手に抱え、みょうじはパタパタ走っていってしまった。かと思えば、あ、と思い出したように声を上げてくるりとこちらを振り返る。

「高尾!今度試合見に行っていい?」
「へ?あ、うん、いーけど!」
「やった!かっこいいとこ見せてね!」

太陽みたいな眩しい笑顔を見せて、みょうじはまた背を向け走っていった。対する俺は、口許を押さえてその場にしゃがみ込む。…やっべ、めっちゃにやける。確実に赤くなっているであろう顔を隠すように俯いて、こんな顔じゃ部活戻れねーよ、と頭を掻いた。

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